金獅子


部屋の前で監視していた火星士に向かって人差し指を向ける。
指先に溜まった小宇宙を静かに開放した。


「積尸気 冥界破!」


ドサドサドサッ
倒れた火星士たちを確認してから、後ろに居た二人に合図を送る。
やっぱ、黙らせるには一番これが手っ取り早いね。


「おま、すげ。
 何したんだ?」
「秘密。
 そのうち機会があったら教えてあげるよ。」
「それより、早く行きましょう。」

またあたし達は廊下を走りだした。
その光牙があったっていう女の子は、どこにいるんだろうか?

「光牙?」
「?
 どうしたの?」


振り返ると、一番後ろを走っていた光牙が止まっていた。
何か、あったのかな?

「何か、聞こえねえか?」

光牙に言われて耳を澄ませるが、特に何も聞こえない。


「あたしは、なにも聞こえないけど?」

空耳でも聞こえてるのかな?
それとも、光牙だけが聞こえてるだけとか?
光牙が聞こえるという音を頼りに、どんどん進む。


「こんなもんかな?」


光牙が気になった部屋にいた火星士をブッ飛ばした。
部屋の奥を見てみると、そこには七色に輝く道があった。

光牙は、何も言わないでその道を通って行った。


「いったい、何を感じたんだろう?
 光牙は…。」
「わからないわ」


もしかして、何かに共鳴してるの?
分かんないなあ…。







「あの子が、そうなの?」
「さあ?」


あの道を通ってついた緑色の空間。
光牙はそこにいた女の子と、なにかをはなしている。
あたしらが首を突っ込む余地もないので、少し離れて二人を観察してみる。
うん、なんかお似合いじゃないか!


「お二人さーん。
 ラブラブしてるのはいいけど、早くここでない?
 早くしないとめんどくさいことになるよ。」
「ラブラブしてねえよ!
 アリア、とりあえずここから出よう。
 ついてきてくれ」
「うん…」

「あははー!」


冗談めかしにいってみたけど、マジで出た方がいいかもしれないな。
なんか、でかい小宇宙を感じたし…。

「何もなきゃいいんだけど…。」









アリアちゃんを連れて廊下を歩いてく。
いったい、どこにあたしらは向かってんだろう?


「この塔は一体何なの?」
「ただの塔、じゃないみたいだよね?」

元々聖域があったところにこんな悪趣味な塔をたてやがって…センスを疑うね。


「ここはバベル。
 マルスの野望を実現するためのモノ・・。
 マルスは小宇宙を集め、おそろしいことをしようとしている。」
「小宇宙を集める?」
「どうやって…。」
「どうせ、ろくでもない方法でしょ?」


「…ここには聖闘士達の小宇宙を集める機能がある。」



そうアリアがいった時、
目の前に映ったそれは、しんじられなかった。


「なんだ、これ…。
          なんだよッ!!!これッ!」

「ひどい…。」


あたしたちの目の前にそびえる柱のような物の中に多くの人たちが閉じ込められていた。
聖闘士の小宇宙を集める機能…それってまさかこれ!?


「檄先生!小町!アルナ!皆!」
「なんてひどい真似を…」

学友たちと恩師の姿も、その柱の中にあった。
ここから出は生きているのか否かすらわからない。
確認するため近づこうとしたその時、


ゾクッ


「ッ!」

殺気のような小宇宙を感じて、あたりを見回す。
何か…誰かいる。並みの聖闘士じゃない。
まさか…これって・・・・


「まってろ!
 今助ける!」


あの柱に向かおうとする光牙をユナが止める。
ユナも、気づいたか…。


「なんだよ!
 …?」

「アテナ様。
 すぐに部屋にお戻りください。
 今のあなたはバベルを安定させ、
 来るべきその時まで光の小宇宙を高めること。」


ゆっくり歩いてくる、その男がまとう黄金の聖衣は間違いない。
レグルスの・・・・獅子座の聖衣だ!


「お前たちか。
アテナ様を塔から連れ出したのは。」


射貫くような鋭くつめない視線。
額に傷を持つ黄金聖闘士は、まさに歴戦の貫禄を持っていた。

「黄金聖闘士・・・・なぜ、アテナに使えるべき貴様がマルスの下につく。」

光牙の前に出て、あの男と向き合う。
そして前から見えないように、後ろに手をやってユナに先に行けと合図をした。

「ッユナ!?
 なにするんだよ!」

ユナが光牙とアリアを連れて外に飛び出た。
黄金聖闘士はあたしを見据えて動かない。
あたしはこいつが皆を追うのを止める時間を稼がないと・・・・。

「たかが青銅…といいたいところだが、お前はただの青銅ではないらしいな。」
「さあ?
 どうでしょうねえ?
 分かりやすいように、体感したらどうですか!?」

その言葉と同時に、魂を発火させる。

「積尸気 鬼蒼焔ッ!」

蒼い炎が、黄金聖闘士の体にまとわりついた。


「あたしの名前は、南冠座のホタル。
 見ての通り、積尸気の使い手だよ。」
「積尸気だと…?
 やはり、ただの青銅ではないらしいな。」
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。」


黄金ともなるとやっぱり、焔に巻かれたくらいじゃ動じないか…。
でもその余裕も・・・・

「いつまで、もつかな?」


ゴウッ


蒼い火がさらに勢いを増した。
黄金の鎧の上から舐めるように炎が上がっていく。

「いったい、貴様は何をしようというのだ?
 この程度の炎では、この身は焼けぬぞ。」
「積尸気の焔は、肉体をもやすんじゃない。
 もやすのは、もっと別のものだよ。」
「何…?」

そう言う、黄金聖闘士の目が見開かれる。
やっと、気がついたか…。

「成程、魂をもやす火か。」
「ご名答。
 早くしないと、肉体は無傷でも魂は大火傷間違いなしだよ。」

それどころか、燃え尽きちゃうよ?
そう囁くと、まるで馬鹿にしたように笑いやがった。

「何かおかしいことでもいった?」
「この程度の焔で、我が魂をもやせると思っているのか?」
「!」

やばい。
そう思ったけど遅かった。


「ッガ・・・・」


光の速度で移動したあいつはあたしの腹部に膝を入れた。
肺から呼吸が一気に抜けて、喉がらつぶれた声が溢れた。

「ッグ!」


蹴り飛ばされた衝撃で飛ばされつつ、追撃から逃れるため至近距離でまた魂をもやした。
先程よりも強い炎に、流石に距離をとった黄金にあたしは血を吐き出しながら睨んだ。


「ほう、私が蹴りを入れるのを感知してあらかじめ受身を取っていたか。」
「伊達に、昔から光速の蹴りはくらってないってことだよ!
 積尸気…冥界「おそい。」っ!」

冥界破を繰り出す前に今度は右の拳が顔面を狙って飛んできた。
紙一重でよけるが、今度はわき腹に左の蹴りがぶち当たった。


「ぁぐ!?」


ボールのように吹っ飛ぶ体。
壁に頭をうったせいで目の前が、ちかちかする。

「ハァ・・・・ハァ・・・・黄金は、コレだからいやなんだ…。
 光速とか、うらやましすぎるだろ。」


やばいな…。
これ、折れたかも?


「ほう。
 それほど喰らいながらもまだたてるか。」
「なめるなよ。
 これぐらい、余裕だっての。」



ぺっと血反吐を吐きつつ、悪態をついた。
…これ以上戦っても勝機なんてない。
光牙達も、そろそろ逃げられたころだろうし…。


「悪いけど、いったん終わらせてもらうよ。
 じゃあね。
 今の世の、獅子座の聖闘士。」

積尸気 冥界破!

今度は、あいつにじゃなくて自分に向かって冥界破を放った。
黄泉平坂についた途端力が抜けた。
これで、あいつはあたしの事を追ってはこれないだろう。

…ああ、なんかめっちゃくちゃ無様だ。
あたし…。








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