過去の記述




医務室から出て廊下を歩いていくと、
何だかごつい人が前から歩いてきた。
…なんだ、この小宇宙?

感じたことない強い小宇宙に警戒しつつ通り抜けようとすると、向こうから声をかけてきた。

「君達、セイントファイトに出場する選手かね?」
「学園長、おはようございます。」

あたしと光牙以外は穏やかに挨拶をする。

「…学園ちょ―?」

そんな人、いたんだね。
代理とかは居たけど…。

「ほら、あんた達も!」
「うぎゃ!?」

ユナがあたしと光牙の頭を鷲掴んで無理矢理下げさせる。
何であたしも頭下げなきゃいけないんだ!

「どうだね、最後の調整は進んでいるのかね?」
「はい!順調です。」
「ま、みててくださいよ。」

明るく返事をする生徒たちを嬉しそうに見つめる学園長。
特に不自然などない、普通の光景だ。

「頼もしい限りだな。
 君たちがペガサスの光牙君と南冠座のホタルくんだね。」

鋭い目で見られて、背筋に嫌な悪寒が走った。
コイツの目…ただもんじゃない!?

「ええ、うん。まあ…。」
「そうですが、何か?」

その違和感を感じ撮ったのか、また別の要因か光牙もどこか落ち着かないようだった。
あたしは警戒心を悟られないようにしながらもぶっきらぼうに返事をした。


「君らの活躍には期待しているぞ。
 頑張りたまえ。」


穏やかに笑って歩を進めた学園長。
その背中を見つめつつ、あたしは溢れた冷や汗を止められなかった。
…どうしてだろう。
あの人の小宇宙、他の人とは何かがちがかった。
…何で、こんなに気にかかるんだろう?



ーーー



「セイントファイトまで、あと三日かぁ。」

皆真面目に最後の調整してて、かまってくれないんだよなあ。
あたしは、そう言うのすると逆に緊張して駄目だからやんないけど。
公共のテラスで外を見つめて、ぼうとしていると背後から声をかけられた。


「おお、ホタル。
 少しいいか?」
「激センセ―じゃん。
 どうしたの?」

先生からお説教以外であたしに話しかけてくるなんて珍しい。

「お前の、その力について聞きたいんだが…。」
「力…?」

別に、こっちに来て大層なことやった覚えはないけど?
なんかやったっけ?


「あの青い焔についてだ。」
「・・・ああ。」

鬼蒼炎のことか。
そういえば、一回だけ先生に見せたね。

「それが、どうかしました?」
「お前のあの焔は誰に教わったんだ?」
「誰…って」

思わず狼狽する。
あまり師匠のことやあたしの過去について話したくない。
話すのめんどくさいし、信じてくれないだろうし。


「…師匠ですよ。
 あたしの。」
「・・・・そうか。」

ぶっきらぼうに答えつつ、それ以上は踏み込むなオーラを出す。
流石に長年聖闘士をやってるからか、すぐにそれに察したようで檄先生は言いたいことがあるのだろうが、それ以上踏み込むことはしなかった。

何で、いきなりそんなこと聞いてきたんだろう。
すっごい気になる。


「どうして、そんなこと聞いてきたんですか?」
「・・・・。
 昔、文献で一度見た事があるだけだった。」

先生が文献?
全然似合わねえ!
…ゲホン。
何を文献で見たの?

「魂をもやす青い焔。
 積尸気…そんな恐ろしい技を使っていた聖闘士が200年前の聖戦にいたと書いてあった。」
「!」

マニゴルドと、セージ様のことだ…。
ひゅっと息を飲んで固まるあたしに気が付かないのか、空を見あげながら檄先生は続けた。

「今、そんな技を使う聖闘士がいるとは聞いたことがなかった。
だから、お前がその技を使った時本当に驚いた。」
「………。」


失敗したかも。
まさか、こっちじゃもう使い手がいなくなってるなんて…。


「……ゴメンなさい。
 あたし、この技を使える理由は言いたくないんです。」

この人だったら話しても信じてくれるかもしれない。
しかしながら、まだ誰かに話せるほど自分の中で整理がついているわけではなかった。

「気にしなくていい。
 誰にでも言いたくないことはある。」
「先生…」


先生は、あたしの頭を撫でて去っていった。
なんだか、子供扱いされたみたいだ。
子供だけど。







「修行するかぁ。」






久し振りにあの世の通り道で。











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