頂上ついたよ!



少年と別れた後、アスレチックのような崖を渡り、谷を超えたところで山を一気に駆け抜けた
日が落ちる前に、無事に山頂にたどりつけそうだ。

「ッついたぁ―ーーー!」

全速力を緩めずに、山頂にたどりついた。
疲れたぁあ・・・・。

「おお、ホタル。
 二番目だな。」


この濃い顔はっ!
我らが檄先生じゃないですか!


「先生。
 いたんだ。流石に早いね。」

この先生に負けるとか、けっこうショック…。

「お前より簡単なルートを通ってきたからな。」
「ふぅーん…。」


まあ、いいけど。
それよりもあたしが二番目なら、一番目は誰よ。
一番じゃなかったことに不満を持ちつつ周りを見渡すと、見覚えのある顔を見つけた。


「あ。いたんだ!」


離れたところで一人立つのはさっき別れた少年!
ビシッと指をさすが、ふいっと顔をそらして目すら合わせようとしなかった。


「・・・・」


少年よ、また無視か。
まあ、もういいけどさ。
そんなことよりも。

「センセぇ―。
 あたし当分寝てますから、
 時間になったら起こして下さい。」

明日の朝まではまだ半日くらい時間がある
睡眠をしたところで怒られはしないだろう。

「自由だな、お前は…。」

自由でナンボ。
縛られるのは、嫌い…。
そんなことを思いながら岩に腰を掛けて目を瞑ると、すぐに穏やかな暗闇がやってきた。


「ぐぅ―――…」

闇に身を任せて、あたしは夢の世界へと旅立っていった


――



「お・・・・おい・・・」


…体、ゆすらないでくれ師匠。
まだ、眠いんだ。


「いつまで寝ているつもりだ!!
 さっさとおきんかぁ!!


師匠の声とは似ても似つかぬ太い声に、違和感を覚える。


「―…んあ?」


目を開けると、こい顔があった。
間違っても悪そうながらも魅力あふれる美青年の顔じゃない。
…なんか、よくわかんないツボとか買わせそうな顔してるなぁ。


「・・・・押し売りはお断りです。」
「そうか、寝ぼけているのならば起こしてやろう。」

グッと拳を握った檄先生を見て、ゆっくりと立ち上がる。

「平気で―す。
 今起きましたから!」
「お前、寝てるとか余裕だなー。」
「ああ、蒼摩、光牙。
 クリアしたんだね!」

気がつけば完全に太陽が登っていた。
あたしがついた時は夕日が降りる前だったから、半日以上はねてたんだろうなぁ。

「あたし達もちゃんと合格したわよ。」
「ユナ!龍峰君!」

良かったぁー!
イツメンは全員合格か!

「此処にいる全員が合格者だ!
 …と、言いたいところだが、その前に失格したものをつたえておく。」

檄先生の言葉にザワッとどよめく。
…失格!?
まさか、寝てたからあたしか!?

先生に指さされたのは
あたし…の隣の人。
ビビらすんじゃねえよ!
なにやらかんしたんだこいつ。


「アルゴ!お前だ。」
「え…な、何でだよぉ!」


うろたえる少年に、厳しい顔の檄先生が毅然とした態度を見せた。


「今回、お前の行動は全て把握している、
 どうやら、お前は今回この試験の意図を分かっていないようだな。」


…意図?


「本来、聖闘士はアテナを守る仲間同士。
 互いを思う気持ちはアテナを思う気持ちと同じといっても過言ではない。
 大切な仲間の邪魔までしたお前に、セイントファイトに出る資格はない!」


ごもっとも。
たまにはいいこと言うじゃんか先生。


「くっそお!蒼摩!
 てめえのせいだ!」

何の逆切れ!?
蒼摩に掴みかかろうとした少年だったが、
その手を蒼摩が掴んだ。


「蒼摩!」


アルゴとかいう人から出された拳を掴んで、はなした。


「どうした…かかってこいよ!
 負け犬の息子がぁ!」
「悪いなアルゴ。
 聖闘士の拳はアテナを守るためにあるんだ。」


吠える少年に対して冷静な態度の蒼摩。
蒼摩…成長したね。
なんかよく分からんが、嬉しいよ!

「さあ、そのほかの者はセイントファイトに出場し白銀聖闘士を目指すがいい!」
「おぉーー!」


やったね!
これでアテナに会うための機会を手に入れられる!

「なお、お前らの中で断トツの一位と二位で突破した奴だけを伝えておくぞ。」
「…断トツの一位と、二位?」

「凄いね、その人たち。」


誰だろ?
ダントツとかすげえなあ―ー。

「たった一人で白銀聖闘士でさえもてこずるルートを通過してきた
 オリオン座のエデン。」

皆の視線が、一人は慣れたところに立っていたあの少年に向かう。
あの子、エデンっていうのか。知らなかった。
態度に見合って、強いんだなァ。
少しだけ身直した。

「それと、熟練の聖闘士でも通過するのには、
 かなりの時間がかかるルートを短時間で抜けて来た南冠座のホタルだ。」

ん?
んんん?


「…あ、あたし?」

突然名前を呼ばれたことにびっくりしてうろたえる。
正直そんなに難しい道を追ってきた記憶がない。

「お前!?
そんなルート通ってきたのか!?」
「あたしも今初めて知った。
 成程ねぇ…。」


確かに少し難しいと思ったけど、そこまでじゃなかった気もしたんだけどなァ。
まあ、伊達に積尸気ブートキャンプを何回も乗り越えてきたやけじゃないからねー。


「でも、だいぶ自分の実力試せたしまあいいか。」
「じ、実を言うとお前ってめちゃくちゃ強いんじゃ…?」

引き気味の光牙。
そんなに退かなくてもいいのにな。

「すくなくても、蒼摩と光牙よりは今ん所強い自信はあるかな?」

でも龍峰君に勝てる自信ありません。
なんとなく。
相性が悪そうなんだよなー。


「でもま、あたしもまだ体力も小宇宙も回復しきれてないし。
 案外、戦ったらあっさり負けちゃうかもね?」
「そ、そうか?」
「そうそう。
 自信持ちなって!」

あたしはイツメンで話しながら、山を下りた。
今回思ったことはやっぱり昔からキャンプは大嫌いってことだね!!!








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