欲しがってる答え



「…シオン?」

初めてみるシオンの表情を見あげる。
いつもとは違う、シオンの様子にふざけることすらできない。


「お前は昔馴染みだ。
 幼い頃から知っている親しい友だ。
 そんなお前が傷つく姿を見るのは辛いのだ…。」
「……うん」


シオンの言葉が少し震えているように感じた。
辛い時代だし、傷つくことなんて当たり前なんだけど…


「らしくないね、シオンちゃん。」


それでも…貴方はそれを当たり前だと思いたくないんだね。


「なん…」
「心配しないでって。
 あたしはそう簡単に死なないし、こんな傷だったらすぐに治るからさ」
「そういう問題では…!」

シオンの手からするりと逃れる。
触れ合っていた場所から温かい熱気が逃げた。


「分かってるわかってるって!
 とりあえずさ、早く聖衣を直してよ。
 もっと強くなるために修行しないとなんだしさ」

「全くお前は…」


少し怒ったような顔をしたけど、すぐに呆れた顔をしてあたしに背を向けた。



「…すぐに聖衣を直そう。
 それまでユズリハの修行の相手をしていてくれ。」
「えー?
 あたしじゃユズリハの相手になんねえって。」
「何を言う。
 教皇様が嘆いていたぞ。
 お前は白銀並の力があるのにいつまでも昇格したがらない、と。」
「白銀並の?冗談!
 あたしは一介の青銅聖闘士だよー?
 白銀になれるわけないじゃん!」

「…。
 一介の青銅をまだ未熟とはいえ黄金候補の修行相手にはしないがな。
 まあいい、いつまでも青銅にいるのにもお前なりのこだわりがあるのだろう。」


シオンは呆れたように笑ってから、壊れた聖衣と向き合った。



「ホタル」
「んー?なに?」


「…生きてる理由を探すのはいい。
 だが、死んではならないからな。」

「…。」

「お前は優秀で…若く、先があるのだから」


シオンの視線は聖衣にくぎ付けだし、それ以上何も言おうとしない。
だけど、何が言いたいのかくらいわかってる


「…分かってるよ。
 聖戦始まる前に死んだりしないから。
 死ぬべき時くらいわきまえてるさ」


シオンが言いたいこと。
言いたくて言えないこと。
それを察しながらあえてあたしは別の答えを口に出す。


「その時までは死んだりしないからさ」


“この聖戦を生き延びる”

それがシオンの望む答えでも、あたしには言うことが出来なかった。






「…ごめんね。」















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