余計な傷さえ 「生きてる価値だと?」 「そっ。 うまくは言えないけど…。」 あたしは頭を掻いてから、適当な場所に腰を下した。 「命は塵芥。 それはあたしの信条であり、師匠の教え。 それが揺らぐことはまずあり得ないんだけどね。」 だけど、とあたしは言葉を切った。 少し自分の中で言葉を整理しながらゆっくりと紡いだ。 「うまくは言えないんだけどさ。 なんかこうじゃないと実感が持てないんだよ、生きてるってことに対して。 カルディアの馬鹿じゃないけど、そう思う。」 「傷つくことが生きているのことの実感なのか? 確かに、痛みによって生きていることを実感はできるが…お前らしくないな。」 「当たり前じゃん。 あたし痛いの嫌いだし。」 にひっと笑ってから、あたしは床に散らばる聖衣の残骸を見つめた。 「でも…なんて言うんだろうね? 本当に、自分でもよく分からないんだけど…。」 言葉にできない感情。 ていうか、まず説明が出来ないな。 「がむしゃらにやんなきゃいけない? 違うな…ん゛ぁあああ!!!もうわかんねえ!!!!」 考えがまとまらない! アレ!?ほんとあたし何が言いたいんだろ!? 「…要するに、お前自身もわからないと言う事か。」 「そーみたい。 なんかもう、わかんないわ。」 力なく笑うと、シオンはふっと苦笑いしてあたしの頬に触れた。 血豆がつぶれて堅く、かさついた冷たい手で触れながら、あたしを見つめるシオンは本当に真剣な瞳をしていた。 「変なことを聞いて悪かった。 だが…お前に余計に傷ついてほしくなかったのだ。」 ← → back 141/132 |