闘いたくないわけ




「私はこの世でただ一人の聖衣の修復師。
再生と技巧をつかさどる黄金聖闘士
白羊宮を守護する牡羊座アリエスの貴鬼!」
「牡羊座の貴鬼…!」
「ってことは羅鬼のお師匠!?」
「黄金聖闘士だったの!?」
「あ、そっか。
羅鬼のお師匠さんか!」



ポンッと手をたたくあたしを、貴鬼はちらりと見た。
なんだか、睨まれた気がするけど…なぜに?



「しかし、こんなボロボロの聖衣でよくここまでたどり着いたものだ。」


呆れを含んだ声でそう言うと、
彼は小宇宙を燃やした。


「!?
 なにを…」
「これから君の聖衣を修復する。」
「えぇ!?」
「時間がない。
 手荒くいくぞ!」

貴鬼は一方的にそういうと、着衣したまま聖衣の修復を始めた。
・・・そういや、いまってクロストーンだけど修復ってどうやってんだろ。


「おぉ…」


牡羊座は小宇宙だけで光牙のボロボロだった聖衣を治していく。
すっげえな、この人!
光牙がいたそうに雄たけびを上げてるのは無視の方向で。


「…あれ、もしかしてこれあたしもやられる系?」



・・・別に、そこまで壊れてない気がするんだけど、な…?



「いいかペガサス。
 12宮を突破した先に待っているのはマルスだ。」
「マ、マルス…」
「この戦いはペガサス聖衣を持つ者の宿命。
 君は、君たちの力で最後まで戦い抜くんだ。」


なるほど、つまり牡羊座は聖衣の修復はするけどともに黄金聖闘士とは闘ってはくれないってことか…。
まあ、普通に考えて一人の聖衣治すのに小宇宙かなり使うから5人分直した後に戦わせるのも酷か。
・・・ちなみに、あたしは聖衣の修復受けなくていいかな?なんて思ってる。


「そしてもう一つ大切なことがある。」
「?」
「君たちも知っているだろうが、この先に待ち構えている黄金聖闘士の力は想像を絶するものだ。
 黄金聖闘士の力の強さは聖衣だけではない。
 彼らが小宇宙の神髄を極めているからだ。
 君たちが彼らに勝つには君たちの小宇宙を、一瞬だけでもいい。
 極限まで高めなくてはならない。」


それって…まさか


「小宇宙の神髄。
 セブン・センシスに目覚めるのだ。」


「セブン、センシス?」


「味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚、そして人間の持つ五感を超える第六感。
 その上にあるもの…それがセブンセンシスだ。」



・・・え、それにあたしらが目覚めろって?
ははっ…無理だろ…!?



「…ふう、修復完了だ。」




あたしが思わず自暴自棄になってる間に、光牙の聖衣の修復が終わった。
キラキラと輝く生まれ変わった聖衣…。
これから、万全の状態で闘えるな!

・・・闘う相手は黄金なんですけどねー。



「はぁあ…」


まさか、あたしが時代は違うにしろ黄金と戦う日がやって来るなんて…。
しかも遊びでも修行でも何でもない。
殺し合いだなんて…。


「嫌だなぁ…。」



相手が強いから闘いたくないわけじゃない。
むしろ、強い相手と戦うのは戦士としては光栄だ。


闘いたくない理由としては…
相手が来ている聖衣が、かつて親しかったものの聖衣だから。
その聖衣を纏っていたものを、純粋に憧れていたから。
自分には越えられない壁だったから




だからこそ…




「闘いづらいなぁ…。」




特に…蟹座。



















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