漕ぎ手





「何で何で何で俺がこんな事をォオオぉぉ!!」

所変わって海の上。
小さな小舟にあたしたち三人は乗っていた。
漕ぎ手は文句を言う光牙で、蒼摩は悠々と座っていた。


「アテナの居場所を知りたいんだろ?」
「ぅええええ…気もぢ悪い」

蒼摩に出された条件は、爆発があった島の調査の手伝い。
その島・・・もといあたしたちが元々いた島を調べるために、光牙が漕ぐボートにのってるけど、気持ち悪くて吐きそう。
…船酔いがひどい。


「ホタルも漕げよ!」
「無理…。
 今動いたら絶対吐く。
 ぅッぷ!!」


へりに頭を出して、下を向くあたしに蒼摩が呆れたように声をかけた。

「オイオイ、大丈夫かよ。」
「大じょばない…。」

せ、積尸気で黄泉坂に行くレベルでやばい。
これは、お迎え来そうだ。


「クッソォオオ!
 こんなとこ、ジジイに見られたら…」



その言葉を一気に終わらせて、あたしと光牙は頭を下げる。
噂のジジイこと、辰巳が家の外で海を見ていたからだ。
今あったりでもしたらとかめっちゃ気まずくなる!







「あ゛ー気゛持ち゛悪い。
 うおえ…ぷ!」

蒼摩だけを、上陸させあたしと光牙はボートの上に隠れてた。
もっとも、あたしの場合上陸する気力が残ってなかっただけど…。

「大丈夫かよ、ホタル」
「無理…」

なんて、隠れながら二人で話していると崖の上から蒼摩が降ってきた。


「調査終了!」
「おつかれー」
「これからどうするんだ?」

「パライストラにいく!
 そこならアテナの事、何かわかるかもだろ?」
「ふうん…。
 って、お前知ってるんじゃなかったのかよ!」

驚く光牙にあたしが冷静に突っ込む。

「知ってる訳ないでしょ…。
 アテナの居場所を末端の人間までしってれば、それだけ危険度は高くなる。
 よっぽどのことがない限り普通はアテナの居場所なんて知らないよ。」

といっても、いまのはそのパライストラにアテナがいるのを仮定した話しだけど。

「そういうなって!
 パライストラなら、誰かしらなんか知ってるだろ!
 なんたって、アテナが作ったんだから。
 ま、決めるのはお前らだけど」


「っぐ・・・」
「もうここまできたら、答えなんて決まってるでしょ?光牙」



――


厳しい道のりを、どんどん歩いてく。
まだ誰かがあたしらのあとをつけてきてるけど、無視の方向で行こう。

どうせマルスの手下で、雑魚なんだし。


「その、パライストラっていうのは何な訳?」


地名って、訳でもなさそうだし・・・。
なんかの組織?


「平たく言えば聖闘士の学校みたいなもんさ。
 そこで聖闘士のイロハを教えてもらうのさ。」
「聖闘士に学校があるの!?
 へぇ―…あたしのときにはなかったよ。」

本当に便利になってるなぁ―。
…でも、学校で学んだところで実戦で使えなかったら何の意味もない気がするんだけど。

「師匠とか取った方が、早いのにね。」
「でも、師匠になれる聖闘士なんて少ないだろ?
 居たとしても、大人数教えるのは無理だし…。」
「それもそうだね。
 あたしのほうも、あたし以外弟子とかとってなかったし。」

ただたんにあの人の場合めんどくさがってただけなんだろうけど。
それに、積尸気を使えるような才能あるやつなんて少ないしね。


「なんか、ホタルは昔の人間みたいなこと言うな。」


妙に勘が鋭い光牙に思わず言葉が詰まる。
正直、今の段階でこの二人にあたしの事情を話したくはなかった。


「…気のせい、でしょ?
ただたんにあたしが無知なだけだよ。」

変なところで勘いいんだから…
図星疲れて、おもわず狼狽するところだったよ!









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