分かっていたこと




息をのんだ。
どうして…そこまでこいつが知っているんだ…!?


「その口ぶりだと、あたしの過去を知ってるみたいだね。
…どこで知った。」


少なくとも敵側が知っているわけがないあたしの過去。
それを知っているということは、なにかしらあたしがここにいる理由を知っている可能性がある。



『さあ?
 そんなことはどうでもいいだろう。』


にたりと笑う影。
黒い鎧が鈍く光って、不気味だった。


『…もしも、お前に力があれば師匠たちを死なせずに済んだ。』
「!」

『そうだろう?
 お前はまだ…成長過程だった。
 それゆえにまだ強くなれた。
 お前の甘さゆえに、未熟なまま戦いに望み…そして彼らは果てた。』


「ッ…」


的確な、言葉。
あたしは思わず歯を食いしばった。


『もちろん、それは完全とは言いえぬ仮定の話だ。
 しかしお前が足手まといだった事実は拭えん。
 お前自身それはわかっていたはずだ。』



そんなの…!



「そんなの、自分が一番よく分かっている!
 自分の実力が足りないことも!もしかしたら師匠を救えたかもしれないことも!」



あの日、あの時、
師匠達はあたしを庇いながら戦った。

タナトスの攻撃を、師匠はあたしに当たらないようにしてくれた。
セージ様は、貴重な札を使ってあたしを救ってくれた。


あたしは、それを甘んじて受けていた。




「そんなの…!全部わかってる!」




あたしが、庇われるくらい弱かったことも。
あたしが、足手まといだったことも。
あたしが、もっと強ければあの展開も…もっと違うものにできたかもしれないことも。




「全部、解ってる!」





師匠たちが、あたしに本当は生きていてほしかったことも。
















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