進もう! 「小細工は抜きだ! 正面から行く!行くぜ!」 光牙の音頭にあたしたちは同意した。 あたしたちは雷のコアがある街を駆け抜ける。 あの塔にあるコアを壊せば…! 「!」 そこまで考えていたとき、地面が揺れた。 感じる殺気に、敵の襲来を悟る。 「さっそくお出ましみたいだね!」 道の向こうから、敵の気配を感じた。 「来る!」 次の瞬間、紅い鞭のようなものがあたしたちの左右をさえぎった。 その衝撃で砂埃が舞い、一瞬視界が聞かなくなった。 「誰だ!」 「牛飼い座のバイエン。 引き裂いてやるぜ!」 ッチ…!白銀か! 鞭野郎の頭部から、また一本のむちが伸びる。 不味い…!左右をふさがれてる状況じゃよけられない! 「積尸気…」 あたしが魂葬破を打とうとしたとき、誰かがあたしの肩に手を置いた。 「え?」 「僕に任せて!」 その言葉と同時にあたしたちの目の前に水の壁が出来て、正面から来る鞭を防いでくれた。 「龍星座聖衣!」 「龍峰!」 「ここは僕に任せて先に進んで!」 水の壁を突き破って、鞭が龍峰君を縛り付けた。 おいおい!大丈夫!? 「ッく…!負けるかぁッ!」 龍峰君が踏ん張って、鞭のもとである白銀を上に投げた。 …龍峰君って見かけによらず力持ち? って、仲間ピンチなのにこれはさすがに緊張感なさすぎるわな! 「龍峰!待ってて今…」 「いい! それより、僕に任せて先に進みんだ!」 龍峰君が必死の形相で、先に行くように促す。 確かに、一人で闘ったほうが戦力を抑えることはできるけど…。 …でも、これ以上言うのは龍峰君に悪いよね。 「龍峰君…分かった!」 「…龍峰、任せた!」 あたしたちは龍峰君に牛飼い野郎を任せて、また走り出した。 ― 龍峰君にあの牛飼い野郎を任せてしばらく走ると、殺気を感じた。 「!」 それと同時に、鋭い葉があたしたちに向かって飛んできた。 「!?」 「富士流忍法! 岩土返し! 降り注いできた鋭い葉を、栄斗が防いでくれた。 そして栄斗は小声であたしたちに囁いた。 「ここは俺がやる。 お前たちは先に行け。」 「栄斗…」 「白銀あいてに、あんた一人で平気なわけ?」 「なめるな。 白銀だろうが、俺は負けない。 …この岩が崩れたら、お前たちは走れ!良いな?」 「あぁ!」 栄斗の指示にあたしたちは頷いて、 女の白銀の技が栄斗の岩を砕いた瞬間、あたしたちはかけだした。 「栄斗…死ぬなよ!」 「縁起でもないこと言ってやんなって!」 心配そうな顔する光牙の背中をたたいて、あたしはまた前を向いた。 さて、次は何が出てくることやら…。 ― 「光牙!入口が!」 遺跡を駆け抜けると、塔の入り口が見えてきた。 やったね! あの中に、アリアちゃんが…! そう思った瞬間、上から小宇宙が降って…いや、落下してきた。 「!?」 「はぁ!?」 「くじら座のメッカル! 皆まとめて押しつぶしてやる!」 巨漢が塔の真上から落下してきた。 お前…! なんでいきなり猛スピードで降って来るんだよぉおお!!!! 予想外すぎて思わずフリーズしたわ! って、こうしてる暇はないか! 「鷲座聖衣!」 あたしは塔まで駆け抜ける気満々だったけど、 ユナはあえて反撃することにしたみたいだ。 ユナの巻き起こした竜巻が、あいつの落下速度を緩めた。 「ッチ!」 だけど、普通の落下スピードに加えて、重い体重、更には小宇宙を加算されて、ユナの力だけじゃ防ぎきれない。 あたしも手を貸そうとしたとき、炎が竜巻に合わさった。 「仔獅子座聖衣! 俺も手を貸すぜ!」 「蒼摩!」 「いけ! ここはお前らがいなくても、俺たちだけで十分だ!」 「ありゃりゃ、あたし用無し?」 「ふざけてないで、さっさと行って!」 「分かってるよ。 …ユナ、蒼摩。 負けんじゃねえよ?」 あたしは二人に笑いかけた。 二人はあたしの笑顔を見て、うなずいてくれた。 「お前こそな!」 「あはは、誰に物言ってんだよ。若造! それじゃ、ね!」 二人に背を向けると、光牙が流星拳で壊した扉まで走った。 「南冠座聖衣!」 ← → back 141/108 |