おだてられて悪い気はしません






「ホタル。」
「シャイナ。
どうしたの?」



雷のコアに向かう途中の休憩中。
一人で少し物思いにふけっているとシャイナに呼ばれた。
何の用だろ?


「お前に頼みたいことがある。」
「頼みたいこと?」


何だろ?
シャイナが人に頼むなんて、珍しい。


「あたしでよければ何でも言ってよ〜。
 最も、金はねえけど。」


こちとらカツカツの状態で旅してんだからなっ!
誰かに貸すような金はない!

「フッ…あんたが金を持ってないことくらい知ってるよ。」
「分かってんならいいけどさぁ…。」


ほんと、むしろあたしらがほしいくらいだよ。


「お前に、光牙を頼みたい。」
「・・・おう?」


何だって?




「あいつは、思い込んだら突っ走るタイプだ。
 それは決して悪いことではない。
 だが、危険が伴う性格だ。
 だから、キープする役が必要だ。」
「そりゃ、今まで一緒に旅してたわけだから知ってるけどさ。
 何故にそれを素性の知れないあたしに頼むの?」


あたしが過去の人間と言う事は、
アテナと瞬さんにしか話してない。
紫龍には少しだけほのめかすようなことは言ったけど…
それでもはっきりと知っているのはあの二人だけだ。


だから、シャイナにはあたしがどこからきて、何者なのかなんて話したことない。
むしろそれをごまかしてきた。

そんなシャイナにとっては素性の知れないあたしに頼むって…どういう意味があるんだろ?



「確かに、お前がどこの誰なのかは知らない。
 アテナに聞いてみても、答えてはくださらなかったしな。」
「じゃあ…」
「だけど、アテナはお前を“誇り高き聖闘士だ”と言っていた。
 アテナがそこまで言うお前を、信じないわけがないだろう。」
「…シャイナ。」


沙織は…あたしのことそういっててくれたんだ。
あはは、なんか照れくさいなぁ。



「お前と実質過ごしたのは数日だったがお前のことは実力ともに信頼している。
 そんなお前だからこそ、あいつを頼みたい。」
「買いかぶりすぎだよ。
 あたしはそこまで強くない。
 いや、実力があったとしても一番大事な時には実力を発揮できないし。」
「そんなもの、場数を踏んでいけばどうとでもなるさ。」


これでも、場数踏んできたんだけどなぁ…。
まあ、あたしよりも長く聖闘士やってるであろうシャイナには劣るだろうけどさ。



「光牙を、頼んだよ。
 あいつと協力してアテナを救い出してくれ。」
「…おっけー。
 頼まれたよ、シャイナ。」


あたしは頼られたことをうれしく思いつつ、
それを表情に出さないようにニヒルと笑うとその場から離れた。



「人に頼られるってのも、案外いいもんだね。」


光牙のもとに向かう途中、あたしは思わず頬を緩ませた。
さて、頼まれたからにはしっかりとあいつの手綱引っ張らないとな。






















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