仔獅子との出会い




アテナが連れ去られてからしばらくして、
あたしと光牙は島を出ることにした。

目的はもちろん、アテナ・沙織の奪還!
もう好きに暴れていいからね!


『ホタル。
 光牙を、頼む。』
『まかせなさいって。
 これでもあいつよりも長く聖闘士やってんだよ?
 少しくらい、力になれるさ』

辰巳が運転するボートの上で、あたしは島を出る前にしたシャイナとの会話を思い出していた。
何が自分に出来るかわかんないけど、やるしかないって感じだ。

「…それはそれとしてすごい気持ち悪…うえぇええ…」


こ、この船……早すぎじゃねえ!?
波に揺られて胃の中がグルグル揺れる。


「…ホタル大丈夫か?」
「ぅへへ…も、問題な…ぅっ!?」

顔を真っ青にしたあたしが口元を抑えると、光牙は慌ててあたしの背中をさする。

「わぁあああ!?
 おま、もう喋んな!」

船の上で騒ぐあたしたちを乗せ、船は本土についてしまった。


「それじゃあまたな!ジジイ!」
「辰巳!また会おうね!」


ここまで辰巳に別れを告げて、
島に上陸したあたし達は、先に進んだ。


それからしばらく荒れた土地を走りつづけた。
そして壊れた家のところで、光牙は立ち止った。
此処から見える風景は、とてもきれいだ。


「さてと、これからどうするか…。」
「何も考えずに出てきちゃったもんね」


光牙が手に持ってる、石を見る。
綺麗な青の石。
そして感じる小宇宙。


「ねえ、その石って…」


光牙に話しかけようとした時、
人の気配を感じた。
ハッと臨戦態勢をとると同時に、誰かが壊れた壁の上に立っていた。

「おっ!
 そいつはクロストーンじゃねえか!
 ってことは、お前も聖闘士か?」

そいつは、壊れかけた壁から軽い身のこなしで飛ぶと光牙に近づいた。

「見せてみな!」
「な、何だお前!」


そいつは光牙の言う事無視して、
一瞬で獲った光牙の石を見ていた。

…なかなか、やるみたいだな。


「あっ!?いつの間に!?返せ!!!」
「…とられたことに気が付いてなかったんだ。
 修行が足りてないぞォ光牙」
「うるせえ!それより返せ!」
「いーじゃん!減るもんじゃねえし!」
「減る!!返せ!」
「ほーれほれ!
 捕れるもんならとってみな!」

クロストーンを取り返そうとする光牙と、おちょくる少年。
まるで小さな子供レベルの二人。
微笑ましい光景だけど、幼すぎるよ。


「…がきくさ」

「いい加減に・・・しやがれ!」


二人はしばらく、じゃれあいをしていた。
本人達からしたらそんな可愛げのあるもんじゃないんだろうけど、どこからどうみても小犬同士のじゃれあい程度のレベルだ。

生温かい目で少年たちを見守っていたが、光牙のパンチに反撃した少年のパンチが光牙の腹部に綺麗に決まった。


「ッぐ!!」
「あ」
「ぅああ!
 やっちまった!」

「おお、綺麗に決まったね。」


倒れる光牙の体を、少年が支える。
あたしもそれを手伝って二人で光牙を横にする。


「あーあ、完ぺきに延びちゃった。」
「わりい、加減が出来なくて…。」

申し訳なさそうに頭を掻く少年に、手をひらひらと振る。


「それはいいよ。避けられなかったこいつが悪い。
 それより、あの程度の小宇宙を加減できないと実戦だともっと加減できないよ」

一応先輩らしくそう教えると、驚いた顔された。


「もしかして、あんたも聖闘士?」
「まあね。一応そうだよ。
 いろいろ聞きたいこととかあるだろうけどさ、このアホチンが目覚めてからでもいい?
 勝手に話し進めちゃうと、後で分かんなくなるのこいつだし。」

「あ、おう。
 じゃあ、コーヒーでも飲んでようぜ。」


少年は、その場に座ったのでその場にあたしも座った。








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