おひさ!



三人で険しい山道を登る。
時折飛び去る鳥たちを眺めながら歩を進めていると、久しぶりに感じる気配がした。


「おーーい!
 光牙君!ユナ!ホタルさん!」

山道の上にいたのは、龍峰君と栄斗。

「龍峰!」
「栄斗も!」
「ひさしぶりー!」


龍峰君に抱き付こうとしたら、あっさりよけられた。
うぅ、寂しい…!


「相変わらずだな、お前は。」
「そーいってもらえるとありがたいよ。」

皮肉を言う栄斗とにらみ合っていると、朗らかに笑う龍峰君が間に割って入ってくれた。

「ホタルさん元気そうで安心したよ!
 合流できてよかった!」
「俺の読み通りだな。」
「まあ、少し考えれば誰でもできそうだけどねぇ。」


栄斗のドヤ顔がむかついたから、先ほどのお返しに軽く皮肉ったら頭を小突かれた。


「痛いな!何すんだよ!」
「ふん!」

「二人とも無事でよかった!」


あたしと栄斗の掛け合いを見ていた光牙は本当にうれしそうに笑った。
だけど、そのあとに寂しそうに笑ったのを、あたしは見逃さなかった。




―――




街についたあたしたちは海の見えるカフェで休憩をとった。
そこで、龍峰にアリアちゃんの事やエデンのことを話した。



「そうか、エデンが…。」
「あの時、邪魔さえ入らなかったらエデンを止められたんだろうけど…。」


そう、あの戦いのときに誰かの邪魔が入った。
エデンではない、誰かの…
今思い返しても、あの暗い深淵のような小宇宙には身震いする。
あんな性質の悪い小宇宙を持つ者などロクな奴ではないだろう。



「にしても、よく食うなお前は。」

あきれ顔の栄斗の視線の先には、パンを頬張る光牙。
詰み上げられた食器はすべて光牙が食べた残骸だ。
よく食べるのはいいんだけどさ…


「これからアリアを取り戻すんだ!
 今から精を付けないとな!」
「それは構わないけど、食いすぎて腹痛でも起こしたら本末転倒だからね」


あんたの喰いっぷりを見ているあたしのほうが胸焼けおこしそうだよ。
ため息をついてから、あたしはグラスを持ち上げてストローを咥えた。


「そのアリアだが、居場所を知っているのか?」
「…」


パンを頬張っていた光牙の動きが止まった。
まあ、知らないからね。


「そんなことだろうと思ったさ。」
「じゃあ栄斗はわかるのかよ!」


そう光牙が切り返したときに、栄斗の眼鏡がキランッと光った。


「ああ、分かる。」
「それ本当か!?」
「本当なの!?」
「へぇ…!」


流石栄斗!
頼りになるねぇ。


「忍者をなめるな。
 お前たちの居場所を調べているうちにアリアが奪われたことを知ったんだ。」
「どうやって?」
「ふっ…。
 火星士たちを何人か締め上げたのさ。」
「なるほど。妙案だね。
 あたしも今度からそうしよっかな?」


魂の状態にすれば、ある程度の情報は引き出せるからね。
…まあ、自我とかそういうのがなくなるから本当にある程度の情報しか引き出せないけど。

バンッ

なんて考えていると、光牙が机をおもっきり叩いた。


「アリアはどこだ!?」
「はいはい、激昂するのは構わんけど落着いて。
 他のお客に迷惑だから!」


立ち上がって聞こうとする光牙をなだめながら、あたしも栄斗の答えに集中した。


「バベルの地下にある、マルスの居城。」
「マルスの…」
「ただし、そこにはマルスはいない。
 確認されているのはソニアとアリア、そして一部の白銀聖闘士と火星士だ。」

「そこにエデンもいる…!
 よしすぐに移動だ!」

意気込む光牙。
その生きは大変素晴らしいと思いますが、少し落ち着いてくれ。

「おいおい…」
「待って、光牙君」


あたしと同時に龍峰も光牙を止めてくれた。


「仮にも敵の居城に乗り込むんだ。
 それなりの準備は必要だ。」
「何も準備しないで行くなんて、馬鹿のすることだよ。」


栄斗とあたしに畳みかけるように言われて、
すっかりしょげてしまった光牙の頭をなでてあげた。


「わ、わかったよ。」
「よしよし、良い子良い子!」
「子、子ども扱いするなよ!ホタル!」
「まだまだあんたは子供だって!」

あたしが嗤うと、ぷっくりと頬を膨らまして抗議する。
ほら、そういうところが子供なんだって!


「それで二人は今までどこにいたの?」
「いろいろだよ。
 ねー、栄斗!」
「…む。」


「…ぅわ。」


何だろ、今すごい意味深な言葉だったよね。
え、何?この二人こんなに仲好かったっけ?
少し引いたあたしに気が付かなかった光牙は栄斗に声をかける。


「なあ栄斗。」
「ん?」
「蒼摩は?
 蒼摩はその後どうなったかわからないか?」


その質問に、今まで仏頂面だった栄斗の顔が少し残念そうな表情へと変わった。


「悪いが、蒼摩の消息についてはまだ何も入っていない」
「…そうか。」
「あれから、結構立つもんね。」


野垂死んでる、なんてことは蒼摩に限ってないだろうけど…。
普通に心配だよね。
あの様子だったし…


「大丈夫だよ。
 今も、どこかで元気にやってるよ」
「そうよ。きっと蒼摩は私たちのもとに帰ってきてくれるわ」
「それもそうだね。
 それじゃあ、あたしたちは帰りを気長に待ってあげようか」


皆で光牙を励ますように言うと、
光牙はにっと笑った。


「ああ、そうだな!」











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