月の申し子



「いいよな、それ。
貰ってよかったじゃねえか。」
「まあ、いらないんだけどね。
 装飾品なんてさ。」


安いホテルでこれからのことを話し合っていたときに、
光牙があたしが机に投げるように置いておいた髪飾りを見ながらいうからあたしは苦笑いしながら答えた。


「それに髪飾り自体はもう持ってるし。」
「そういえば、ホタルのつけている髪飾りはきれいよね。」
「へえ、よく見せてくれよ。」
「構わんよ。はい」


あたしは筒形の髪飾りをとって、みんなに見せる。
するとみんな口々に綺麗と言ってくれた。


「すげえきれいだな。
 今まで気が付かなかったぜ。」
「月に薔薇ってすげえ組み合わせだな。」
「でしょ?
 金の月に青の薔薇なんてロマンチックでしょ。」


筒形の髪飾りは金で出来ていて、中心に三日月があり、
それを映えさせるように蒼のバラが咲き乱れているという一品。


「聖闘士でも、そういうの付けるのね…。」


アリアちゃんが意外そうにつぶやいたからあたしはいやいやと首を振った。


「いんや。
 普通は邪魔だし、何かあった時に危ないから付けないよ。
 けどあたしにとってこれはお守りだから。」
「お守り…?」
「そう。
 これ、人からもらったものだからさ。」

そう。
これは大事な宝物。
これは、師匠から贈られた…大切な―


「じゃあ、これはずっとつけてるの?」
「うん、これは聖闘士になった時にもらったものだからね。」


ふと、これをもらった時の情景を思い返す。
確かこれは…聖闘士になったお祝いにもらったものなんだよね。

もっもと、くれた本人は渡すはずだった女と別れたからあげるとか言ってたけど…。
今となってはわからない。


「それにしても、奇遇ね。
 どっちも月が象られてるなんて。」


ユナが手のひらに置いてある師匠からもらった髪飾りと、
手首に付けてある髪飾りを見比べながら言った。


「確かにね。
 奇遇だよねぇ…。」


…月は過去を示す星。
そして蟹座の守護星。
ある意味あたしにはぴったりだけど…
どんな奇遇だよと突っ込みを入れたくなるのもまた事実。



「ホタルに月が似合うからじゃねえか?」
「確かに、そうかも…。」
「青くて、なんか冷たいけど見てて安心する部分あるしな。」


要はみんな、あたしにあのお月様が似合うって言ってくれてるんだろうけどさ・・・・



「それ、褒められてるのか微妙に分らんなあ。」


あたしが首をかしげると、ユナは笑いながら励ましてくれた。


「あなたによく似合うんだから、いいじゃない。」
「…それもそうだね。」


細かいこと考えたって無駄だよね。
















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