とある露店での出会い





これは、ある街に行ったときの話し。
そこは露店が多く立ち並ぶ怪しい街。
ある露店でそれを見つけたアリアちゃんは歓声を上げた。


「綺麗…!」
「ほんとねえ。」
「…。」



その露店では、金属のアクセサリーからどこぞの呪術師でも持ってそうな怪しい像を売っていた。
その中でアリアちゃんが身を奪われたのは整然と並べられるアクセサリー。
光を浴びて金属特有の光沢を放つそれらはあたしからみてもきれいだった。


「へえ、綺麗じゃんか。」
「女って、そういうのがいいのかよ…分かんねえなぁ。」
「おいおい光牙。
 女の考えることを理解するなんて無理だって。」


こそこそと話しながら、怪しい木造の像を見る蒼摩と光牙。
「かっこいいな、これ」なんて言ってる二人を見るとどうも脱力する。
それと同時にやっぱりあほだななんて思ってみたりしちゃうんだよな。


「…あたしからしたらそれもどうかと思うけどね。」


あきれ顔で二人を見てると、
露店のおっさんはアリアちゃんにいろんなものを見せる。
うーん、うさんくさい。


「綺麗だろ?
 それ、お嬢ちゃんにあげようか?」
「本当に?」

アリアちゃんが手に持つ金のブレスレットを気前よくあげようとする男。

「とかいいつつ、ほかの馬鹿高いものまで買わせようとしたら海に沈めるからな。」


丁度海に近いし。
なんて青い海を見通しながらいうと、怪しい髭の男は高速で首を振った。

「んなまねはしませんよお嬢さん!
 わしはいつでもマトモなことしかしませんぜ!」
「そんな形して言わせても説得力のかけらもないから。」
「ホタル、それは言い過ぎよ。」


ユナにたしなめられるように言われたけど、
それを遮ったのは髭のおやじだった。

「いやいや、こちらのお嬢さんの言うとおりだ!
 売り手も買い手もまずは疑うことをするのが商売でさぁ!
 お嬢さん、あんた世渡りうまくなるよぉ!」
「あんたこそ、商売の仕方わかってんじゃん。
 でもま、あたしは煽てとかには乗らないからね。」
「いやいや、お嬢さん!
 煽てじゃなくて本心さね!」


アリアに金の腕輪を渡したひげ親父は、
あたしの手にも何かを押し付けてきた。

「ちょ、いらないんだけど…」
「そういわずにもらいなされ!
 それは、いつかあんたのためになるよ!」
「はァ!?」

あまりにもしつこい親父にむかついたあたしが本当に海に沈めてやろうかと思ったときに、
ユナがまあまあと間に入る。


「せっかくなんだし、もらっておきましょうよ。」
「ユナ…。
 この世にはただより怖いものは無しって言われてるくらいなんだよ?
 なにかもらってあとでなんかあったらどうすんの。」
「いやいや、お嬢さん。
 本当にそれはもらっておいてくれ。
 ワシよりも、あんたに必要なものだからのう」
「あたしに…?」


手に渡されたもの……それは銀に光る月と歯車という不思議な組み合わせの髪留め。
その不思議な組み合わせを見て、なぜかあたしは受け取る気になった。


「あんたに、“運命”の幸があらんことを願うよ。」


深い蒼の目をした親父の目は、
普通の人間には見えないくらい不思議な迫力があった。
あたしはそれに飲まれないように、あえて不敵に笑った。


「…Grazie(ありがとう)
 あんたにも幸運があることを願うよ。」









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