心の底からの笑い



近場の木の下で野宿をすることにしたあたしたち。
起こしたたき火に当たりながら、体を休める。


「でも、アリア旅を始めるようになってからずいぶん元気になったわよね。」
「あ、それあたしも思った。
 笑うことも増えて、いいと思うよ。」

笑うってことは、人生を楽しむことだと思うし。
…まあ、それの質にもよるけどね。
意地の悪い笑顔を浮かべる師匠の顔を思いだして思わず苦い気持ちになる。
あの人が笑ってると大抵ロクなことにならんのだよなぁ。


「みんなと一緒にいると楽しいから。
今までは、ずっとお城の中に一人でいたから…。」
「お城?」
「うん、物心ついたときはずっと…お城の中にいたの。」
「……。」


こんないい子を、城の中に監禁してたのか…。
人としての自由という尊厳すら奪うなんて…最低だ。

「でも、みんなと旅に出て、いろんなところに行って、いろんな人と出会って…。
 皆が私を助けだしてくれたから、私は知ることができた。
 ありがとう…。」
「…私もアリアに出会えてよかったわ!」
「ああ!」
「そうだね!
 あたしもアリアちゃんに…みんなに出会えてよかったわ!」



だってあの雨の日、光牙に出会わなかったらあたしはここにはいないし。
出会わなかったら、師匠たちに見せていたような…
本当の笑顔を誰にでも出せるようにはなってなかったと思うんだよね。



「ほんと、女の子がもう二人いてよかった!
 光牙たちだけじゃ私きっと耐えられなかったから!」


照れ隠しなのか、本心なのかよく分からないけどユナがそう言って思わず噴き出した。


「なんだよそれ!」
「ちょ、ユナ!
 こんな時に笑かさないで…ぷはははっ!」

今いい感じに湿っぽかったのに…あはははッ!!!


「きっと怒ってばっかでしょうね!」
「ええ!?」
「うわ、その光景が目に浮かんぶわ〜!」


多分、本当にそうだったんだろうなあ。
怒ってばっかりなユナの様子が目に浮かぶ。
たぶん光牙は何でユナに怒られているのか理解すらできないでおろおろしているんだろうなぁ。



「でしょ?
だって男なんて、馬鹿で能天気で世間しらずで間抜けなだけだし!」
「ひっでえなぁ!
 ホタルもなんか言ってくれよ!」


助けてくれって意味で言ってんだろうけど・・
これは、あたしユナの味方するしかないんだけど?


「まあ、たいていのやつはそうだよねぇ!」

ゲラゲラ笑いながら皇帝うすると、我が意を得たりとばかりにユナが盛り上がる。

「ほらね!
 って何すんのよぉ!」
「あはははははは!!!
 って、痛!?
 ちょ、あたしにまで突っかかんなよ!」


怒った光牙があたしとユナにふざけて掴みかかり、ユナと二人がかりで反撃する。
三人でじゃれあっていると、アリアちゃんが声を上げて笑い始めた。
初めて見る、アリアちゃんの大笑い…。
思わず三人で動きを止めてアリアちゃんを凝視する。




「ァ…」



その視線に気が付いて、アリアちゃんが恥ずかしそうにこっちをみる。
それがなんか、おかしくて今度はあたしたちが声を上げて笑った。


「あははは!」



温かい笑いが、とても心地よかった。












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