守りたいものを見据えながら







「この巨大な小宇宙は・・?!」
「こっちに向かってきている!?」




…このデカい小宇宙は、間違えなく黄金レベル。
今の消耗しきった体じゃ、相手になりもしないな。


「激しい小宇宙の脈動…。
 やはり、天秤座聖衣・・・。」



森の奥から合われたのは、赤毛に褐色の肌をした青年。
まとう気配は、まさに圧巻だ。

「…。」


小宇宙も、まとう気配も半端じゃない。
だけど、別に悪という感じがしない。


「わたしてもらおう。」
「この聖衣を渡すわけには…!」


その龍峰の言葉とは裏腹に、天秤座の聖衣は光り輝き、
クロストーンの形となって青年の手元に行く。


それは、つまり




「これも、聖衣の意思。」




天秤座の黄金聖衣が彼を選んだということ。
その青年の視線が、アリアちゃんへ向かう。


「アリアは渡さねえ!」


その視線に気が付いた光牙たちが一気に戦闘態勢を作る。



「その弱り切った小宇宙で?」


重くのしかかる小宇宙。
やっぱりすごいわ…。
これなら聖衣に選ばれても不思議じゃない…!


「!」



しかし、それをさえぎる巨大な小宇宙。
これは紫龍の小宇宙だ…。
すげえ、五感を失ってこれとか…!
相手もここで敵対すればただでは済まないことを察したのか、小宇宙を抑える。


「…今日のところは引き上げるとしよう。」
「待て!聖衣を返せ!」


立ち去ろうとする青年に龍峰が叫ぶ。
すると青年は冷静に言った。


「返してほしければ俺のいるところまで来るがいい。」
「黄金聖闘士が守護する12宮はもうないってのに、どこに行けと?」


あたしが皮肉そうに言うと、青年は少し眉をひそめてあたしを見た。


「?」


一体、何?
しかし青年は背を向けてそのまま森の中に歩いていった。


「俺の名は玄武。
 天秤座の黄金聖闘士だ。」
 


青年の気配が完全に消えた。
これじゃあ、もう追うことはできない…。

「くっ…
 ごめん、父さん…。」



地に膝をついて、悔しそうに嘆く龍峰君。



「天秤座の、玄武か…。」



また、遠くない時期に会いそうだな。






-



あたしたちは水の遺跡から、紫龍たちがいる滝の前まで戻る。
そこで龍峰は、自分の決意を父に告げてあたしたしたちは山を下ることにした。



「悪いが、俺はここで別れる。」


山を下っている最中、そう言った栄斗。
龍峰君が紫龍に決意を言ってるときから様子が変だったけど…なんかあったのかな?



「え?
 おい!」
「すぐに追いつく。」
「…」

そう言って背を向けて歩き出す栄斗。
普段とは違う栄斗の様子に龍峰君も気が付いたのかじっと彼の背中を見ていた。


「…気になるなら行ってあげれば?」



あたしは小さく、龍峰にそういった。
すると彼は少し驚いた顔をしてから力強くうなずいた。


「光牙君!
 僕も栄斗と一緒に行くよ!」
「え!?」
「すぐに追いつくから!」
「おーう!
 気を付けてねぇー!」


手を振って送り出すと、龍峰君は笑顔で答えてくれた。



「…どうしたのかしら?」
「まあ、あいつらにはあいつらの用があるってことだよ。
 あたし等はとりあえず先を急ごうよ。」
「…そうね。」


山を下りきると、茜色の空が広がる。


ああ、童虎もこういう景色を見ていたのかな?
なんて思って少しだけセンチメンタルな気持ちになった。


















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