もう過去になんて戻れないから




「さあ、次は貴様の番だ。」



龍峰を倒したペルセウス座はあたしたちのほうへやってきた。




「それはこっちのセリフ。
 次に地に伏せるのはあんただ。」
「ほう…!
 それでは、やってみるがいい!」



あたしは、その挑発に静かに答えて魂を燃やした。



「積尸気 鬼蒼炎!」
「エトラブロフィ!」


あたしの焔と敵の岩がぶつかり合う。



「ほう!貴様の属性は炎か!」
「さあね!
 あたしは、属性とかそういうちゃちいものはよく分からないからさ!
 アンタらの常識であたしを図ると、痛い目見るよ!?」
「ふん!
 貴様みたいなのにこの俺がやれるというのか!」


明らかな嘲笑に、
あたしはセージ様のように…あたしなりの威厳のある声で叫んだ。


「なめるな!
 貴様のような甘え腐った時代で自分の力を過信してきた輩を、このあたしがやれないわけないだろう!」
「口だけはデカいようだな!」
「お前もな…!」



拳と拳がぶつかり合う。
衝撃であたしたちを中心に風が巻き起こった。



「ハッ…!」
「ヌウ?!」


あたしが繰り出した蹴りをペルセウス座にしっかりとガードされた。
そのまま足を掴まれて、あたしは龍峰のほうへ投げ出された。


「ッチ…!」


空中で回転することで勢いを殺して着地する。
やっぱり、体格差だけはどうにもならないな。
体重が軽い分、どうしても攻撃が軽くなりやすくなってしまう。
こういうとき未発達であることと、女であることが疎ましく思ってしまう。



「俺は貴様のような雑魚と相手をしてる暇はない…。
 さあ、アテナ。
 大教皇様のもとに帰りましょう。」
「!」


相手は余裕綽々、あたしなどまるで眼中にはないという風に
背を向けてアリアちゃんへと手を差し伸べる。


「ッ!
 あたしに背を向けた上にアリアちゃんに近づくだと…!?
 なめた真似を…!」
「まて…!」


あたしの近くで倒れていた龍峰がゆっくりと立ち上がる。


「貴様…。」
「龍峰君…」


「彼女には、指一本触れさせない!」
「おとなしく倒れていればいいものを…。」

ふらつく体を硬い意思で鞭打ってまっすぐ立つ。
いつもだったら優しい瞳には固く激しい意思が燃え盛っていた。


「そういう訳にはいかない…!
 僕の小宇宙と聖衣は父さんが命を削って僕に与えてくれたもの…。
 父さんや、みんなのためには…倒れているわけにはいかないんだ!」
「父子そろって人のために尽くすか…笑止千万!」
「なに…!?」


ペルセウスの言葉に、一気にいきり立つ龍峰。
それを受け流し、見下すような目で龍峰を見下ろすペルセウス。


「貴様の父、龍峰は自らの目を犠牲にこのペルセウスの盾を打ち砕いたという…。
 人のために、その甘さゆえに今は五感を失いただ坐しているのだろう!?」
「な…!」
「ふん、愚かな男よ。」


聞いていればしゃあしゃあと下らねえこと言いやがって…このクソ野郎!


「違う!
 人のために生きる!
 それが聖闘士だ!」
「紫龍という人が愚かなら、貴様はそれに劣る塵芥だろう!
 己のためだけに生きている貴様のようなクズとは大違いだな!
 誰かのために体も、命も張れぬようなクズに甘いのなんの言われる筋合いなどないだろう!?」


一瞬、あたしの脳裏に命も、体も張って全力で生きた師匠たちの背中が浮かんだ。
そのためだろう、普段の罵倒とは違う心の奥底からの言葉が出てきた。



「はあぁあ!」
「大言壮語も甚だしい!」



突進していく龍峰。
あの盾がまた、不気味に光りだした。


「!
 冷たく爆ぜろ!あたしの小宇宙!

 積尸気 魂葬破!」


魂を爆発させて、龍峰君に光が当たらないように粉じんを上がらせた。
視界を防がれたペルセウス座は忌々しいとばかりに舌打ちをする。



「小癪な…!」
「ざまあみろっ!」



その隙に、龍峰君が水のドームでペルセウスを包んだ。
しかし、水のドームは簡単に打ち破られた。
龍峰君と、ペルセウスの間を岩壁がさえぎる。



「鏡花水月!」
「!?」



龍峰の鋭い水の槍が、岩壁を貫く。
慌ててペルセウスは大技を繰り出したが、
まるで水のように湧き上がる龍峰の小宇宙の前では無意味だった。


「廬山 昇龍覇――――ッ!」




解き放たれた、水の龍。
それはペルセウスの盾をも砕いた。

地に落ちる、ペルセウス座の聖闘士。




「…やった、ね。」




倒れたペルセウス座を見て思わず息を漏らす。
少し、すっきりしたかもな。
















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