貴方に会えた気がした





だけど、よくよく感じて見れば違う。
あたしの知らない人の小宇宙だった。




「かつてのドラゴンの聖闘士…紫龍。」
「ドラゴン・・・。」



皆で彼の前に立つ。
長い髪をした彼の目には、痛々しい眼帯が巻かれていた。



「彼が、ドラゴン紫龍…。」
「龍峰のおやじさんか。」
「感覚器官のすべて、五感を失った彼はずっとここで坐しているようだ。」



感覚全部……。
改めて思うけど、どうしてそんな状態で生きていられるんだろう…。
そんな状態では、いつ心がおかしくなってもおかしくなんて無いのに……
なんて、なんて強い精神力…。


「小宇宙だけで、龍峰を修業付けたっていうのも納得いくわ。
清流のように穏やかだけど、深みを感じる小宇宙。」
「ああ、魔障を負った奥に、強い意志を感じる…。」


一瞬、空気が揺らいだ。
それを感じていると紫龍の隣に、一人の女性が立っていた。



「もしかして…龍峰のお母さん!?」


マジか!
うわ、龍峰のお母さんマジ美人!


「あなたたちのことは、龍峰から聞いているわ。」
「龍峰は、今どこに?」
「龍牙の滝に向かったわ。」
「龍牙の滝?」


何じゃ、それ?


「さらに奥にある、龍の牙とも言われている滝のことだ。
 その滝こそが水の遺跡だ。」
「じゃあ、あいつ一人で遺跡に!?」
「なるほど…。
 じゃあ、早速向かうとしますか!」
「ええ、そうね。」


皆が、その龍牙の滝にいこうと紫龍に背を向けたとき、
あたしは紫龍に小宇宙で声をかけた。


『もしかして…あなたって童虎の弟子だったりするかな?』


この人の小宇宙は、どことなく童虎に似てるから…。
もしかしたら、という思いできいてみた。


『…老師を知っているのか?』



案の定の回答に、あたしは思わず笑った。
だけど、今この場であたしの素性を明かす気はない。



『あいつは…童虎は、古い馴染みだった。教えられるのは今はここまで。
 教えてくれて、ありがとう』


老師、か。
あいつ、そんな風に呼ばれてたんだ。
確かにあいつはそんな感じするよねぇ。


「……ハハッ」



やばい、笑える。
童虎の弟子に逢えたことを、
震えるくらい喜びながらあたしは、あたしを急かす仲間の元まで走る。


「良い弟子を、あんたは持ったんだね。」


良い弟子を小宇宙だけで育てられるような、すばらしい弟子を。









.




back
141/84


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -