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「のう、ナナシ。
良ければわしと旅行せんか?」
「え?
旅行?」
天秤宮を通り過ぎようとしたときのことだった。
話しかけてきた童虎にそう振られたのは。
「旅行って…どこに?
イタリアとか?」
「わしの故郷じゃ。
折角じゃしお前に見て回ってほしくての。」
「童虎の故郷…って」
まさか、中国!?
うそ!行ってみたい!!!!
「行きたい!」
「それはよかった!
教皇様にも儂から許可を得ておく!
準備を怠るなよ!」
「おッシャああ!!!
なんか童虎が気前いいのが妙に怪しいけど、やったね!
中国旅行じゃあああ!!!!」
「失礼じゃな!その言い方!」
ていうかもう行くこと決定なんですね!
いきなりの展開だったけど…旅行とか好きだし!
いろんなところ見て見たいから大賛成!
「日程とかは教皇様と確認を取っておく。
だからいつでも出られるようにせい!」
「そこにあたしの意思は反映されないんだね!
知ってたけど!!!!」
「どうせおぬし、いつも暇じゃろ?」
「言い返せないのが辛い!
事実だけどさぁ…。」
あたしだってここに引きこもりたくて引きこもってるわけじゃないんだからね!?
いや、まあ元の世界でも引きこもり同然だったけどさぁ…。
休日限定引きこもり的な?
「…まあ、楽しみに待っとれ。
良い思い出を作るいい機会じゃろ?」
「…うん!そうだね!」
童虎はあたしの頭をゆるゆるなでるとそのまま奥に引っ込んじゃった。
同い年くらいなのに妙に子ども扱いされてるなあ…あたし。
それにしても
「なんでいきなり旅行なんて誘ってきたんだろ、童虎の奴。」
いきなりすぎるし、いいのかなぁ?
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