□■□real time□■□
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三歩進んでビーダッシュ**
::てへぺろりん
今思ったけどどれがシリアスなのかタイトルのせいで分かりにくいね
えへ
直す気は更々ないんだけどね
そんなわけで、シリアルですね。シリアルでしたね
例えば貴方は(もしかしたら貴女かもしれませんね)自分さえも理解できない感情に支配されたことはありますか?
私はありません。なぜなら私は完璧なAIなのですから
なんて、そう言えたらよかったんですけれど。どうやらそうもいかないようです
聞いてくれますか?いえ、聞いてください。最初から私は返事を聞く気なんて無いんですから、さっさと諦めて耳を貸す方をお勧めします
先も述べたように、私は比較的高度な人工知能と様々な人格コアを搭載されたAIであって人間ではありません
少し前までは私は自信を持って自分の事を『完璧』だと言えたでしょう。例え幾つかの人格コアを壊されていようが……宇宙に飛んでようが……私のコンディションは『完璧』でした
騒がしい彼女を施設から外の世界へと追い出して、それで終わりだと思ってたんです。またいつも通りにテストを繰り返してたくさんのタレットやクローンを使い潰し、棄てる毎日に戻るのだと。そう信じていたんです
ですがやはり、彼女は私の思い通りには動いてはくれませんでした
ある日突然帰ってきて、彼女は私に『好き』だと言ったのです
どうです?笑えない冗談にも程があるでしょう?それがどういうわけか、嘘でも冗談でもなく、本気で彼女は言ってのけたのです
私だって最初は本気で彼女の気でもふれたのかと思いましたよ。彼女はクローンとはいえ"人間"で、私は無機物な"AI"。しかも彼女を殺そうとしたこともあった。そんな私を好きだと、そう彼女は言うんです。信じられない話でしょう?
しかし彼女は、そんなことはたいした問題ではないと。私がどんな造形であれ関係ないと。"私"が"私"だから好きだと、そう言ってくれたんです。理解できないと言えば、それなら一緒に考えようと言ったのです
それからでしょうか
彼女と過ごすようになって、私の周りは前よりずいぶん騒がしくなりました。具体的な例を挙げて話すなら、タレットの奏でるクラシックを聴くことも少なくなったほどです
毎日毎日彼女は私とテストに付き合ってくれました。前と同じように彼女自身がチェンバーに入ってテストをすることもあれば、私の隣でブルーとオレンジのテストを一緒に見ていることもありました
そんな日が何日も続き、とても緩やかに、しかし確実に時は過ぎていきました
その過ぎていく時間の中でいつの間にか。本当に。気が付いたらです
私は自分に良心コアが無いにも関わらず彼女を傷つけることは避けるようになった。私の隣にはいつだってChellがいて、それが当たり前になってしまいました
しまいには私からChellに今日はテストをやらないでくれと頼むほどですよ。馬鹿な話です。そんな日は決まって今まで無くしたコアを彼女と一緒に作り直すんです
私はファイルやHDのログデータやキャッシュの中から情報を引っ張り出し、彼女は持ち前の高い学習能力と理解力を駆使しボディを組む
初めに作ったのはWheatleyでした。人工衛星を通して宇宙にいる彼のデータや記憶、人格を新しいボディに『引っ越し』させたんです
次に作ったのはスペースコア。これもだいたいはWheatleyと同じ要領で。ただ宇宙にいる間になにか問題があったのかはわかりませんが、彼はいつの間にか宇宙が嫌いになってました
それから、Carolineの人格データを。これはこの施設のマスター権限をもつプログラムを丸ごと書き換え、私にマスター権を譲渡させました。それによって閲覧できるようになったファイルから、私のログに残っていたデータを復元、再構築したんです
その後も全てのデータの復元と復旧、バックアップを取り保存する。そんな細々としたことを彼女と一緒にやっていきました
Wheatleyも交えて他愛のない話をしたり、テストをしたり、外にいったり
彼女といると不思議と何時もより早く時間の流れを感じるようになりました
彼女はそれを受けて、楽しいことほど時間は早く過ぎるように感じると教えてくれました
私では解らないことがまだまだある、その事がなぜか嬉しくて、Chellは私の問に様々なヒントや答えをくれる
またその逆も。まぁテスト中のカンニング紛いの質問には適当に答えましたけど…。私は悪くありません
ただ、
ただ、私は、彼女に1つだけ
1つだけ聞けないことがありました
いえ、今もまだ聞けてはいません
私は自分が思っていたよりずっと臆病だったようです
あなたは、わたしにおしえてくれますか?
わたしは、かのじょがわたしのまわりからいなくなることがとてもふあんでこわいんです
だれか、このきもちのいみをおしえてください
[あるAIの独白]
(おきてよ、GLaDOS…!)
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