real time

三歩進んでビーダッシュ





::安心院さんと…


昼下がり。中々に太陽が仕事をしてくれなかったようで校内はとても寒い

ほぅっと息をはくと律儀に白くなる程度には気温が低い

窓の外はちらほらと雪の白さが伺える。まぁどうせ明日には溶けて足下をグショグショに濡らすだけなんだけど


『くっそ寒ぃ……寝そう…』


声を出そうにしても歯がカチカチと震えてろくな発音にならない

右手に握られたシャーペンと机に広げられた教科書とノートがかろうじて授業中であることを私に示している

眠気で下がっている視線を無理矢理教卓へ向けると黒板に何やら英文を板書していく頭の薄い教師の後ろ姿が収まった


………嫌なものを見たなぁ


何となくポテンシャルとモチベーション的な面で激しく落ち込みを見せた私の心理は今日も正常に働いている

そのまますることもなく、ぼーっと教師を眺めていると板書が終わって私達生徒の方へ向き直った


…前から見ても綺麗に真ん中だけハゲてる


右手でシャーペンを回しつつ頭はこの退屈な時間をどうやって凌ぐかを考えてる

幸いに座席は一番後ろのど真ん中。実は最後列の中でも最も教師の注意が薄く、授業がサボりやすい

とりあえず黒板の内容をノートに写しつつこれ見よがしに『勉強してますけど何か?』アピールをしておく

再び黒板に向き直ったのを見届けて机に広げられたノート類を片付け変わりに


あれ、色鉛筆どこいった


スケッチブックを始めとした画材を鞄から引っ張り出した


さてと。彼女に会いに行こう


何も描かれていないまっさらなページを開き鉛筆を滑らせる

HBの薄く頼りない線に線を重ね輪郭を作り上げる。Bに持ち変えて迷い線から必要な線を見つけ繋いでいく


あ、描き忘れ見っけ


ボールペンで鉛筆の線をなぞり消ゴムを用いて不要になった鉛筆の線を白く塗りつぶす

余分な線を消し終えざっと全体に目を通す


あ、髪の色…どうしよっかな……


全盛期の頃の黒髪か、今の白髪か
大いに悩むところではあるが今日のところは現実に従い白髪で色を着けていく


んー……ネジ…あえて描かなかったけど、まあ、いいか


教師の目を盗みつつ順調に着色を進めていく

色鉛筆はどうやら家に置いてきたままらしく、手元にはない
水彩かコピックかで悩んだあげく、今右手に握っているのはコピック。絵の具は犠牲になったのだ…


あ、肌色が!!コピックの肌色が!!
やべぇ!赤買い換えるの忘れてた!!色出ねぇし!!


……あくまで【順調に】進めていく
これについて私は異論を認める気はないし議論する気もないしそもそも誰も気にしてない


…なんか、色々納得できないけど、とりあえず完成…かな


スケッチブックには薄く微笑みを浮かべた【安心院なじみ】が描かれていた


お久しぶりです、安心院先輩


目を閉じてページをなぞる。ゆっくりと目を開いて前を向く

そこには真面目にノートをとっている生徒の姿も、黒板に英文を書き写している教師の姿も無く、私以外に誰もいない


『いるんでしょ?安心院先輩』


スケッチブックを閉じて誰もいない教室に声をかける

無人な分響いた私の声に応じるように笑い声がして教室の戸が開いた


「おいおい、今は授業中のはずだぜ?」

『やー、これが退屈すぎて苦痛だったんで会いに来ちゃいましたよ』

「僕は君が【僕に会いに来る】為だけに授業中に絵を描いていたかと思うと一抹の不安を覚えざるをえないね」

『それはそれ、これはこれ。どうせ今こうして先輩と話してる時間だって向こうに戻ればたったの一瞬なんですから遊んでくださいよ』

「まぁ君のスキルで呼び出された訳だし?僕としても楽しいことなら大歓迎しようじゃないか!」

『んー?先輩、目が据わってますよ…』

「僕ときもちー事でもして遊ぼーぜ?」

『え、ちょ!?そういう遊びはノーサンキューですよ!!ってこっち来ないでください!!』









安心院さんが変態になってしまった…

追記


2013/01/02 10:14 (0)



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