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プロローグ

 
 これは、遠い異国の物語。
乾いた風と金色に輝く砂の王国で語られる恋物語。
時にはウードの調べに乗せて、吟遊詩人が謳う太陽と月の物語。
 
 かつて、砂の王国を治める王には同じ年に産まれた三人の王子がいた。最初に生まれたのは隣の国から迎えられた姫である正妃が産んだ第一王子のタクト。
 その数日後に産まれたのは正妃の侍女であった側妃が産んだ第二王子のトウイチロー。
 半年後に産まれたのは、宴で見染められた踊り子が産んだ第三王子のユキナリ。庶子であるユキナリだけは七歳まで離宮で育てられていたが、王の計らいで二人の王子の遊び相手として王宮にむかえられた。
 同じ年に産まれた腹違いの三人の王子。王は誰が跡継ぎに相応しいのか値踏みする様に三人を競わせようと画策したが、王の意に反して三人の王子はとても仲良く成長した。
 正妃を母に持つ第一王子のタクトが王になること。第二王子のトウイチローと第三王子のユキナリはそう信じて疑わず、彼が王になった暁にはその御世を支える為に尽力しようと心に決めていた。

「オレは王様なんて、器じゃないよ」

 第一王子のタクトは心優しく穏やかな性質で、賢く頭の回転が速い第二王子のトウイチローを尊敬していたし、武勇に秀でた第三王子のユキナリに憧れていた。
 仲の良い三人の王子が互いに認め合い尊敬し合う間柄である事は王の思惑からは外れていたが結果としては悪いものではなかった。

 これは、そんな穏やかな砂の王国で起こった恋の物語。この世の全てを掴むことすら可能な王子が、愛しい者をただ、己の腕の中に抱きしめたいと恋願うための物語。

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