雑渡

不完全な闇は青みを帯びていた。白爪よりもまだ細い月は、まだ空の低い所を漕いでいるに過ぎない。作戦を決行するには、幾ばくか早かった。微塵も動くことなく、身を潜めることや息を詰めることなど苦痛の内には入らない。ただ、最大の拷問は『つまらない』ということだった。部下に「組頭はここにいてくださいよ」と脅迫めいた笑みを浮かべられ、一応、そこにはいるものの、

(退屈だな)

相手の寝首をかくこともなければ、騒ぎを引き起こすことも、火を放つことも知り得た情報を画策する必要もない。だらだらと過ぎていく時間に、血管を食いちぎりそうな、たぎる何かがない。

(早く仕事を終えて、学園に行きたい)

暇に任せ、忍び刃を鞘になっている所から引き抜いて。霜降る鈍い光を指でなぞる。切っ先に当てれば別だが、当然、血が滲むことはない。ただ肪が巻いた刀身が更にどんよりと曇り、そこに私は溜め息を吹き付けた。







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