鉢雷(現代・転生)

現実なのか虚構なのか、混線した映像が、ざっ、と嵐のように通り抜けた。既視感、なんて生やさしいものじゃない。身を抉る熱は、あたかも、今、感じているようだった。極彩色の過去にそのまま負けて飲み込まれそうになる。思わず、自身の掌に指先を食いこませ、その痛みに今へと還えれば、雷蔵が、あやふやな面立ちのまま、私を見つめていた。

「夢を、見てたんだ」

私がそう事訳すると、彼は私の言葉を噛みしめるように、夢を、と反芻させた。それから「どんな夢?」としめやかに尋ねてきた。凪いだ海のような静けさが、私たちの間に横たわっていた。くもりひとつない、美しい静けさだった。「忘れてしまったよ」と吐息のように漏らせば、雷蔵は「そう」と私よりも小さな声で呟いた。嘘だと分かっているのだろう。けど、それを暴かないのが、雷蔵の優しさだった。その優しさを淋しい、そう思うのは私のわがままなのだろう。そう分かっていても、ひそりと私に棲みついてしまった淋しさを拭い去ることができなかった。





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