竹+鉢(竹にょくく前提・現代)

※竹にょくく前提の竹+鉢。勘ちゃんは幼馴染。竹谷が悶々してる話。



「はぁ?」

はね上がった語尾に、馬鹿じゃねぇの、ってニュアンスを感じ取った。ヘッドホンを着けたままこっちを見やった三郎の顔には、はっきりと書いてあった。呆れました、と。あからさまな面持ちに、普段なら文句の一つや二つくらい返す所だったが、さすがに自分でも「馬鹿だよな」と思っていたから、何も言えなくなってしまった。はぁ、と盛大に溜息を吐いた三郎の視線は彼の手元に落ちた。今日発売の雑誌には彼の好きなバンドのインタビューが掲載されているという。それでも、一応、話は聞いてくれるらしくて、目は記事に向けられたまま「お前さ」と話しかけられた。

「兵助にどんな答えを望んでいたわけ?」
「どんな答えって?」
「だからさ、兵助に『勘右衛門の事、好きか?』って尋ねて、なんて答えてほしかったんだよ?」

そう三郎に問われて、息ごと言葉が詰まった。ぼそぼそと「…どんなって……あんまり考えてなかった」と思ったままに正直にいえば、溜息が一段と深くなった。今度は声に出される。

「馬鹿じゃねぇの」
「分かってるって。…けど、なんか、聞いちゃったんだよな」
「で、兵助は何て?」

少しはちゃんと話を聞こうとしてくれたのか、三郎はいつの間にか雑誌から俺の方へと視線を移していた。中途半端に開いていた雑誌を彼が畳み、ぱたり、と空気が閉じられた。三郎が耳に付けたヘッドフォンを外せば、女性ボーカルの曇った声が漏れ聞こえた。

「え……予想通りだった」
「予想通りって?」

しっかりと耳にこびり付いて離れない、兵助の声。

「『当たり前だろ』って」

乾ききった喉に言葉がもつれた。我ながら情けない声だった。予想通り、そう最初から兵助の答えなんて、分かっていたはず。むしろ、「そんなことない」って勘右衛門のことを否定する兵助なんて想像できなかった。頭では理解していたこと。けど、だったら、どうしてこんなにも------。

「ま、そりゃそうだわな。生まれてから今までずっと一緒なんだし、何だかんだ勘右衛門が兵助を守ってきたんだし。俺らの知らない絆ってのもあるだろうしさ。兵助にとって勘右衛門は特別なんだろ」

別段、驚くわけでもなく、軽く頷いて肯定する三郎に「んなこと、」と言い返した俺の語気は自分でもびっくりするほど強かった。驚きに声を一瞬飲んで、もごもごと誤魔化しつつ「分かってるって」と続ける。どうだか、って表情を浮かべながらも「なら、気にすることねぇだろ」と三郎は取り成すように返してきた。

「なぁ、何で俺なんかを選んでくれたんだろうな…」

暗い方へ暗い方へとずるずると引きずられていく感情は、あまりに不慣れで、どうすればいいのか、全然分からなかった。




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