伊作+仙蔵 (現パロ・にょた・文仙前提)

※女の子化してます。文仙前提。

太陽が翳るころには急激に保健室は寒くなってきた。ひそりと忍び寄る冷たさに、カーディガンの襟を合わせてボタンを留める。病人かけが人でもいれば暖房でも入れているだろうが、あいにく、部屋には自分ひとりしかいない。気温が下がってきたのは感じていたが、動いたら何か体に籠っている熱が出てきそうで、壁にかかっているリモコンを取りに行くすら億劫で、そのままにしていた。

(もう、今日は来ないだろうし、当番日誌を書いて帰ろう)

ペンケースを取り出すために、机の横にかけてある鞄に片手を突っ込む。空いた右手で分厚い日誌をめくる。今日の日付のページを開けても、まだ、なかなかをペンケースらしき形状のものを探り当てることができない。片手間でやっているせいだろうか。仕方なく、鞄を覗いてみると中には、シャーペンや消しゴム、定規に色ペンや付箋などが転がっていた。チャックを閉め忘れてしまったのだろうか、ペンケースの中身がぶっちゃかってしまったらしい。

(はぁ…)

地味かつ、何か妙に腹が立つ事態に自分の不運を呪いながら片づけていると、ふ、と日誌に影が落ちた。くすん、と鼻を鳴らす音に顔を上げれば、「寒い」と憮然とした表情をした仙蔵が立っていた。入ってきたことに、全然、気付かなかった。ぐるぐる巻きにした紺色のマフラーに顔をうずめている。覆われている部分以外に見える肌の色はこっちが心配になるぐらい蒼白で。いくら冷え症だとはいえ、ちょっと、大丈夫だろうか。

「あれ、文次郎は?」
「あの馬鹿か? あの馬鹿なら生徒会室に籠ってる」
「あー、何、また仕事引き受けたの?」
「まったく、ただでさえ要領が悪いのに、この時期に引き受ける奴があるか」

ぶつくさ言いつつも、それは文次郎を思って言ってることなのだろう、と分かるから、仙蔵の罵詈雑言も聞き流す。

「それで、保健室に来たわけ?」
「ここなら暖房が効いてるかと思って」

けど当てが外れたようだな、とため息交じりに呟く仙蔵に「あー、今日は人が来なかったからね」と事訳すると、今度は大きな舌打ちが聞こえた。あからさまな態度に、ちょっと意地悪を言ってみたくて。「先、帰ればいいのに」と言うと、「マフラー借りてるから、な」と、これまた意地っ張りな仙蔵らしい返答が戻ってきた。

(素直に、暖房の効いている生徒会室で待ってればいいのに)







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