5年

梅雨の到来の感じ方
上から兵助、雷蔵、ハチ、三郎、勘ちゃん



良質な火薬を保つために掬ったそれを掌と指で濾すように下の壺に振り分けていく。と、いつもならばすっかりと落ちきるそれが僅かに残った。粒と粒とが貼りついている。見遣った天窓の先に広がるのは青空ばかり。だが直に火薬のような色合いが混じりだすだろう。そうすればここは深い暗闇に閉ざされる。

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初夏に浮かれる声が溢れる外とは対照的に、図書室は誰もいない。穏やかに時が漂っていた。だが、この長閑さも今日までだ。若干、普段よりも重く分厚くなっている本、乾ききった古書からも漂ってくる墨の匂い、しっとりとした手触り。全てにおいて、その季節の到来を告げていた。

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すぃ、と黒の弾丸が過った。自然と追った先には、綿のように柔らかな毛はとおの昔に生え替わった雛鳥が必死に鳴き叫んでいる。競争に勝った一羽に餌を与えると、親鳥は巣から離れ、低い地に集まりだした虫を捕まえるために、また急降下した。この季節が終われば、いよいよ南へと旅立つのだろう。

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こめかみで反乱を起こしていた脈拍は、やがて心臓を杭で打たれるかのような痛みに変わった。吐き気が咽喉の空気を押し上げ、酸っぱさが口内に広がる。拍動が跳ね返る残響が頭を穿ち続け、激痛に食いしばった歯が自然と削れる。唯一、正常に働いていた嗅覚が、ぼんやりと土気を捕えたような気がした。

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渡り廊下がいつもよりも深く鈍く軋んだ。湿気に絡まりうねる髪を振り払い、少しでも気分を明るく上げようとする。委員会のことでため息をつく雷蔵や兵助。巣立ちを寂しがるハチに頭痛に苦しむ鉢屋。この憂鬱な季節の到来を知らせるのは沈み込んだ面立ちをした友人たちだった。






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