次屋としろちゃん

「何だ、そんな所にいたのか。探したってぇの」

てっぺんから降ってきた言葉に、それは僕の台詞です、って言いたくなった。もうすぐ冬だというのに、僕の衣は三つ上の先輩みたいな深い青色をしていた。ぜぇ、と息を出し入れする場所が痛い。ずっと先輩を探し回っていたからだ。本当なら声を大にして叫びたい。僕の方が探してたんです、って。でも言えない。

(……だって言っても、無駄だしなぁ)

「どうしたんだ?」
「いえ」

ひゅっ、と頬を風が斬った。がさっ、と着地地点に堆積していた落ち葉が砕け散る。木から飛び降りてきた一つ上の先輩は、いったい何を考えてるのか、全然分からなかった。飄々としていて、掴み所がない。何か言っても、かわしてしまう。

(……ちょっと憧れるよなぁ)

たぶん僕と先輩の差は歳の差なんかじゃなくて、性格の差で。埋めれるものなんかじゃない、そう分かってるんだけど。時々、羨ましくなる。そうやって、何も気にせずに受け流すことができるのが。確かに僕はニコニコ笑ってるのは得意だ。けど、じゃあ、五年ろ組の不破先輩みたいに全てを受け入れるような懐の深さがあるか、って聞かれたら、そういうわけじゃない。

(…現に、今、ちょっと嫌な気持ちになってるし)

ついつい、ため息が漏れる僕の視界を、ざぁぁっ、と赤と黄が錦織った。

「えっ」
「しろ、眉間に皺〜」

ありったけの落ち葉を手で抱えた先輩が、それを放り投げていた。

「嫌なときは笑わなくていいからさ、ちゃんと言えよ。話し相手くれぇにはなるし」






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