竹久々(ややR高め)

熱が満ちた闇はそこだけが前の季節に取り残されたように暑かった。誰も近寄ろうとしない廃寺だ。壁は壊れかけていて、所々からすきま風が入り込む。屋根も一部は抜け落ちていて、ぼんやりとした闇が天井代わりに広がっているような気がした。啄むような口づけはやがて色を含みだし、唇だけでなく耳に首筋に、と散らしていく。

(へぇ、兵助って、こんなところに黒子があるんだ)

普段、見られるのが恥ずかしいと蝋燭完全に消した部屋で事を催すときには気づかなかった肩の黒子に唇を落とした。

肌けかけた(正確には俺が剥ぎ取った)装束の下から覗くやたらと白い膚は月光の如く清浄だった。やがてこれが桜貝のように昂りに染まるのだと思うと、自然と彼に触れる指や唇に欲が灯る。俺の背に掛けられた兵助の腕が、きゅっ、と締まった。

溺れていく夜に、不意に「あ」息の上がった、けれど色のない声が上がった。と同時に、それまで俺の背を引きちぎらんばかりにすがっていた彼の指から力が抜けた。早急にぶちまけたい熱を不意に中断され「兵助?」と尋ねる。呆けた眼差しは明らかに俺を映してはいない。宙に真向けられたを視線を辿れば「あ、満月……」真ん丸の、綺麗な月があった。

俺が呟きに兵助が「道理で明るいと思った」と溢す。さっき黒子に気づけたのは、いつもよりも明るい光に曝されていたからに違いない。もぞ、と俺の下で動く気配に、「何だよ、止めねぇぞ。つうか悪いけど、止められねぇ」と明るい中での行為を嫌がる兵助に先手を打っておく。すると、外れ掛けていた背に再び指先が食い込んだ。

「いいよ、きて」





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