竹久々

※女装任務中の竹子bot兵子botにおほーってなったので


「そんな唇、突き出さくても」

兵助(いや今は兵子か)の柔らかな笑いが閉じた瞼に触れ、くすぐったい。紅をうまく引くことができない俺を見かねたのだろう、「塗りましょうか?」と紡ぐ唇はすでに艶やかに染まっていて、思わず息を飲んだ。あんなに臭ぇと思っていた白粉の香りでさえ、兵助が付けているのだと思えばいい匂いに変わるのだから我ながら単純だ。兵助の申し出に「あぁ」と頷いたものの、傍目に見てもおなご以外の何者にも見えねぇ彼に、どこを見ればいいのか分からず目を瞑った。のだが、どうやら自然と口付けを待つかのような姿勢になっていたらしい。恥ずかしさのあまり、「だってよ〜」と声を上げれば、チクリと痒いくらいの僅かな痛みが唇を咎めた。紅を塗る筆がささくれ立っているのだろう。

「今は竹子でしょ」

思わず閉じていた瞼を上げれば、「やっぱり、その色、似合う」と柔らかそうな、兵助の匂い立つ唇がそこにあって。

「ちょ、ハチ」

思わず自分のそれを重ねていた。

「何やってんだよ」

乱暴に引き剥がしてくる兵助に「今は兵子だろ」とやり返す。

すると「そうでしたわね。……何であんなことしたのです?」ときつく睨まれる。

「だって兵子の紅、色気がありすぎたから」
「え?」
「ほら、俺…じゃなかったアタイのて混じったら、ちょうど良くなった」

少し掠れた紅をそうっと指先でなぞれば、僅かに色づいた気がした。




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