竹久々

「キャッチボールしようぜ」

連休の中日、突然現れたハチはにっかしと、溢れんばかりの笑みをたたえながらグローブを掲げた。ずっと部活の合宿だと聞いていたから彼の登場にびっくりしつつも、何かあったんだろうかと心配になる。

「何でキャッチボール?」

ハチが何がしたいのか全然分からず、そのまま疑問を声に出した。別に呟いたわけでもなく普通の声の大きさだったけど、「えー何だって」とハチが叫んでいるのは距離が離れているからだろう。

「何でもない」

俺も声を張り上げて答え、それから、グローブに収まっていた球を投げる。青空にそれは白い軌跡を、思っていたのよりもやや斜めに描いたけれど、それすら想像して落下点に移動していたハチの元にすっぽりと収まった。

「ナイス」

その球にも負けない皓い歯を見せて、ハチは笑った。グローブも何もないんだけど、と断りかけた俺の手に「持ってきた」と道具一式を握らされ。ハチの真っ直ぐな笑顔に押しきられ、俺たちは近くの公園に来ていた。GWだというのに、(いやGWだからか)子どもの声一つないそこで、俺たちは向かい合っていた。

「行くぞー」

飛んでくる白球は眩しくて、久しぶりにこうやって一緒にいれるのが嬉しくて。「まぁ、いっか」と色々考えるのは後回しにして、俺はハチと楽しむことにした。




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テーマ「人外ファンタジー」
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