タカ綾

しゃくん。迷いなく入った鋏の先、世界が開ける。しゃくん、しゃくん、しゃくん。緩急をつけたリズムが奏でる音楽はとても優しく、まるで子守唄のようだった。安心しきって、目を閉じる。ぱらぱら、と、時々、切られた髪が頬に降り散ってきた。その度に、「ごめんね」と労わるような指先が、わたしの頬をそっと撫でる。以前、「パーマとかの薬品で荒れてるんだ」と教えてくれたその手は、かさかさと乾いていて。愛しさのあまり、思わず、口づけをしたくなった。

(もちろん、しないけれど)

だんだんと軽くなっていく頭の重みとは裏腹に、心地よさに眠気が加わり、首ががくがくと重たく落ちていく。くっついた瞼にそのまま吸い込まれそうになる感覚と戦っていると「はい、できたよ」とのびやかな声が響いた。彼の手の重みが頭から離れた。耳を掠める「目を開けて」という言葉にドキドキしてしまう。まるで、魔法使いに魔法をかけられた人みたいだった。1、2、3。心の中で、数を数え、それから蓋をしていた視界を解き放つ。---------開かれた世界は、いつもと違って、とても鮮やかだった。




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