文仙

泡の上に山となった砂糖は重みに耐え兼ねて、引きずられるように落ちていく。ゆっくり、ゆっくり、泡の海に、その身を沈めていく。円錐形を逆さにした形は、まるで、蟻地獄みたいだ。ティースプーンでかき混ぜると、白い泡に、点々と赤銅のしみが広がって すすると、そのまま泡が下がっていく。唇に鈍い苦味が残った。普段なら、ブラックを飲好んで飲む。だが、今は、この甘ったるさがちょうどいい。胸やけを起こすぐらいの、甘ったるさが。

「馬鹿、が」

その呟きは、文次郎へか、それとも己へか。それすら分からないほど、自分がどうしたいのか、分からなかった。嫉妬、その二文字にで収めることができるならば、どれほど楽か。いや、辞書的な定義では、やはり『嫉妬』なのだろう。目の前で、長い爪という武器を装着した女が奴に密着していた。それを見ただけで、このありさまだ。胸が苦しいのも、馬鹿みたいに気分が悪いのも、ごてごてに甘くしたカフェオレのせいに、全部してしまいたかった。




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テーマ「推しとの恋」
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