竹久々 時々、貨物列車が夜を震わせた。枕木を越えていく音がゆったりとリズムを刻むのを、彼の心音と重ねる。今時、ドラマでしか見ないような木造のアパート。慣れてしまえば、風や電車でガタガタと揺れる窓の音も子守唄だった。(あ、) 不意に頭に重みが柔らかく降りた。それまで俺の髪をすいていたハチの手が止まっていた。ふわふわと甘い寝息が溶け出しているのが分かって、俺も瞼を降ろす。闇が練乳色に霞んでいく。倖せな夢が見れそうだった。 前 次