にょた勘にょた鉢

剥がれかけたマニキュアが気になるのか、さっきからずっと爪を擦り合わせてる。カチカチカチカチ。そんなことしたら余計に取れちゃうんじゃないか、って思ったけどとばっちりを受けたくないから黙っておく。爪を彩るヌーディなワインレッドのそれを「秋の新色だ」と見せびらかせられたのは二週間も前、まだ真夏の頃だ。都会で真っ先に季節を感じるのは服飾だというけれど、いくらなんでも早すぎないだろうか。その時に「その前は赤と緑でスイカで今度は葡萄?」と言ったら鉢屋に呆れられた。もちろん二週間も同じネイルをしているわけなく、毎日きちんと塗り直してストーンやら色々引っ付けてるんだから、その努力は尊敬に値する。

「鉢屋って趣味悪いよね」
「それってさー」

半目で睨まれるけどウサギみたいに赤いんじゃあ迫力も半減だ。

「男の子?それともお洒落の?」

本当は爪じゃなくテーブルで黙っちゃってる携帯が気になってるくせに。

「男の」
「…なら許す」

しばらくだまった鉢屋はそれから携帯を持つと猛然とキーを叩き出した。

「今夜はやけ酒に付き合っくれるんだろ」




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