雑談しながらおでん
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ふう、今日も働いたなぁ。
「おかえり!」
「・・・おう、ただいま」
もうなんだか三郎がいたほうが安心する。
ふわふわと、やわらかい匂いが漂ってきている。
この匂いからすると。
「今日はおでんか」
「あったりー!」
にっこり、と幸せそうな笑顔を見せる三郎は、俺から上着を受け取ってぽんぽんとしてからハンガーにかける。
良妻っぽいなぁとなんとなく思う。
手を洗って、着替えていると、三郎がほかほかと湯気を立てる鍋を運んでくる。
「うまそうだな」
「だろー?いい感じにできてるんだ」
三郎の料理はいつもいい感じだがなぁ。
「いただきます」
「いただきます!」
両手を合わせて食べはじめる。
今日は三郎が何も話してこないので、何か話すべきか・・・と考える。
「三郎はさー」
「何ー?」
「友達と遊ばなくていいのか?」
三郎がご飯を飲み込みながら少し考える顔をする。
「学校で遊んでる」
「そうじゃなくてさ、いっつも放課後俺ん家じゃないか」
「いや、信二朗は帰ってくるのちょっと遅めだから、放課後も遊んでるよ。その大根選んだの勘右衛門だし」
「おまっ・・・友達つき合わせてたのか」
「皆結構楽しそうに選ぶぞ?」
大根を楽しそうに選ぶ高校生男子とか、居るのか?
俺とか、スーパー連れて行かれたら菓子コーナーくらいしか見なかったのに。
不思議な高校生も居るもんだなぁ。
話が途切れたので、もう一度何か話せる事を探す。
「今日、会社で高いところにあった荷物取ろうとしたら落ちた」
「何!?だ、大丈夫か?」
ガタリと音を立てて立ち上がろうとする三郎を止める。
「大丈夫だって。ま、ちょっとあざになった程度だな。」
「そ、そうか・・・」
もう一度座りなおす三郎。その顔はちょっと心配そうだ。
「ま、2〜3日もすりゃ治るって・・・あとは最近愛妻弁当かぁ?って言ってくる同僚が」
「・・・うん・・・!」
「なんだその目。」
「いやちょっと嬉しくて」
出てもいない涙をちょいっと拭うようなまねをしてから、続けて、と手をやってくる。
「男の幼馴染のって言ったら凄い目してこっち見てきた」
「はははっ、まぁそうなるよなぁ」
「まぁ通い妻みたいな事されてるから、妻っちゃ妻だって言ってみた」
「・・・!?」
カラーン、と箸を落とす三郎。顔は少し赤い。
「どーした」
箸が床に落ちたので、ひょいと拾ってさっとスポンジで洗ってから手渡す。
いつも家事やってもらってるんだ、これくらいしなくちゃな。
「い、いや・・・なんでもない」
何かもう話す雰囲気じゃなくなったので、無言でおでんを食べた。
ああ、熱くて美味くて幸せだ。