一緒に家まで!
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「ん、あれ。なにしてんの三之助」
夕方の学校の校庭で、三之助に出会った。
三之助とは小学生の時仲良くしてたけど、今はもうクラスも違うしあんまり話せなくなった。
三之助はスポーティな私服を着ている。
俺は学生服だ。今日は学校は休みだが、
携帯やら宿題やら・・・そういう物を忘れたので、取りに来た。
この前学校来た時、忘れ物取りに来るなら学生服で来いといわれたから今日はしっかり学生服だ。
「ん・・・あれ?コンビニってこっちじゃねーの?」
「違うぞ。三之助の家の最寄のコンビニは・・・えーと、あっちだな」
すっと北を指差すと、三之助がそっちか!と逆方向に足を進めようとする。
俺はそんな三之助の揺れるポニーテールを思わずつかんだ。
「うわっ!?・・・何すんだよ、信二朗。女の髪つかむなよな」
「そっちじゃない」
「え?こっちだろ」
はぁ・・・とため息ひとつ。良く一緒に居た小学生時代から迷子は変わってないようだ。
そういえば良く赤っぽい髪の女子が三之助と緑っぽい髪の少女を引っ張っているのを見かける。
それは学校内だったり、道端だったりしたが・・・。
「今日は誰と一緒だ?」
「作兵衛と左門だけど・・・」
多分赤髪と緑髪がその作兵衛と左門だろう。
仕方ないから俺がコンビニまで連れて行ってやろう。
そう思って三之助の手を握る。
「ん?なんだよ」
「コンビニ行くんだろ?つれてってやるよ」
「は?お前学校に用事でもあったんじゃないのか?制服・・・」
「もう終わったよ。行くか」
三之助一人じゃ夕方になって、夜になってもつけないのわかりきってるからなぁ。
ぐいっと三之助をひっぱる。昔は良くギャーギャー言ってたのに、大人しくなったなぁ。
「あ、メール打っとけよー。コンビニで合流しろ」
「・・・分かった」
三之助はストラップが一個しかついてない携帯を取り出して、メールを打ち出した。
「うわ、作兵衛からメールいっぱい」
「はは、仕方ないなー。心配だったんだろ」
「えーと・・・よし」
ぽちぽちと携帯をいじった後、ぱたんと携帯を閉じてポケットにしまって、三之助は笑う。
昔とおんなじ笑い方で。懐かしいな。
「家まで帰ろう」
「なんでだ?コンビニ行くんじゃ・・・」
「いや、あいつら家のが近いんだってよ。俺も家帰る。」
「分かったよ・・・」
それから家に着くまで、三之助が少し赤い顔で、幸せそうに笑っていたのを、俺はまったく知らなかった。