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しあわせな夫婦

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なんとなく思い出した事を、ぽつりと話す。
どんな話でも、勘右衛門は聞いてくれる。
それは友人関係であった時からずっとそう。
夫婦になった、今でも。
「貴方が私に似合う色は紫だ、と言ってくれた時嬉しかったのよ」
ちょっと嬉しそうにする勘右衛門の前に腰を下ろし、話を続ける。
「死の色だもの。あぁなんで死ねなかったのかしら?なんで今貴方と居て貴方の妻をしているのかしら?」
不思議なものだなぁ、と。私はそう思う。
最初はこうなるともこうしようとも思っていなかったのに。
「今頃私は戦場で死んでいるはずだったのに。」
そう、私は戦忍になって、城に仕えてパッと死ぬ予定だった。
「・・・俺と居るのは嫌?」
「私、世界で一番幸せだと言っているのよ、分からない?」
そういう意味じゃないと言おうとして、間違えた。
そこまで言うつもりじゃなかったのに、口からつい出てしまった。
「・・・わからなくて、ごめん」
「私はそんな貴方を好きになったのだから、そのままでいて欲しいわ」
あぁもう、今日は駄目だ。口からぽろぽろ恥ずかしいことが出る。
「そう?」
「ああ、幸せに押しつぶされそう。だからこんな事を言ったのよ」
もうヤケになってきた。勘右衛門はニコニコと笑ってくれている。
「そっかー、じゃあ俺は義父さんと義母さんへの挨拶の時言った事を守れてる訳だね」
「・・・そうよ」
「幸せにします!ってね。」
なんて事の無い、それでいてキリっとしながら言ってくれたあの日のことを思い出す。
あれはとても幸せだった。もう一度味わいたいと思うくらいに。
「・・・恥ずかしいじゃない、やめてよね」
「・・・こっちくる?」
ぽんぽん、と自分の隣を叩く勘右衛門。
「・・・うん」
勘右衛門の横に、寄り添うようにすとんと座る。
「本当真帆は照れ屋さんなんだからなー」
勘右衛門は私を抱きしめ、頭に頬を摺り寄せた。
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