そうですか
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俺はそうですかが口癖である。
面倒くさいから何事もそうですかで済ますことが多い。
その後厄介事になる事も多々あるのだが、やめられない。
にしてもこの本、面白い。
トントン、と戸が叩かれる。
「どうぞ」
そう言った瞬間戸があいたらしい。
らしいというのは俺が本を読んでいるからだ。
今この本から目を離したくない。
「私だ」
「その声、鉢屋か」
「あぁ、今日は聞いてもらいたいことがあって」
「はい」
本面白い。なにこれ。
「私お前が好きなんだ」
「そうですか」
「だからお前にも私を好きになって欲しい」
「そうですか」
「今日からお前と付きあいたい」
「そうですか」
「返事は!?」
肩を掴まれた。え?聞いてなかった。なんだっけ?返事?
返事か、返事ね・・・え?なんの?
はいかいいえなら・・・はいの方が鉢屋の気分を損ねずに済むだろうか。
「いいよ」
「ほんとか!」
うわぁ、何?すごいいい笑顔。
俺何をいいっていっちゃったの?
「じゃあ明日から私の事は鉢屋じゃなくて三郎と呼べ」
「え、あ、うん」
そっか、名前の呼び方を気にしてたんだ。
じゃあいいよって言ってよかった。
名前くらいなら厄介事には・・・
「信二朗、愛してる」
「あぁうん」
愛してる?あれ?ちょっとおかしくないか。
「じゃあ皆に恋仲になったって言ってくる!」
「うん・・・」
え?恋仲?え?・・・え?
もしかして告白されたの俺?
一人残された部屋の中、俺はまた本に戻った。
明日になればどうにかなるだろ、きっと。
明日になって、どうにかなったかな?とはち・・・三郎をみると笑顔でこっち寄ってきた。
どうにもなってないな。三郎は結構好きだしいいやもう。
今は手を繋ぐ程度だし。
そうして付き合うことになって、一週間後。
「天女様が来たらしい」
という話を耳にした。ほほう、天から降って来ただと。
それは面白い。しかも事務員さんになったんだと。
暇さえあれば、天女様を眺める。
そんな毎日をしばらくおくっていたら、今日の夜自分の部屋に帰った瞬間問い詰められた。
「弓さんが好きなのか」
「違うよ」
「だって弓さんずっと見てた」
「面白そうじゃない」
「・・・私は、面白くない」
三郎面白い物好きなのに、おかしいな。
めんどくさいな、思考は停止でいいや。
そうすればすぐ終わる。
「私はな、嫉妬深いんだ」
「そうですか」
「お前がす、好きだからだ」
「そうですか」
「弓さんを殺したら私をずっと見てくれるのか?」
「そうですか」
「・・・弓さんなんか、殺したい」
「そうですか」
ん?なんか今変な言葉聞こえたような。
「殺したい」
「そうですか」
「殺したい」
「そうですか」
「・・・いってくる」
「え?あぁうんいってらっしゃい」
どこに行くんだろう?厠?
すぐ帰って来るだろうし、一緒に行かなくてもいいだろう。
そう思ってたけど帰ってこなかった。
自分の部屋にでも戻ったのか、そう思って布団をしいて寝た。
次の日弓さんは死んだのだと聞かされて、びっくり。
笑顔の可愛い、働き者さんだったのに。
会話した事無いけどね。
三郎は今日も笑顔で俺に寄ってくる。
「信二朗、愛してるぞ」
俺の顔をがっしり掴んで、三郎の方に向かされた。
「もう弓さんは居ないから、私だけ見てくれ」
うーん、出来る限りな。