まぁいいやで君を諦め
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どうやら美しい女性が、天から降ってきたらしい。
らしいと言うのは、その現場を見たわけじゃないからだ。
でも居るんだろうなということは確実に分かる。
俺の親友・・・いや、つい先日恋人になったばかりの左近が言うのだ。
「弓さんは素晴らしい人だ!」
その一言ならまだいいのだが、口を開けば弓さん弓さん。
あれ?俺らが恋人になるまでには結構な時間を要したよね?
しっかり思い出せないけど、確か年単位。
多分思い出せないのは心が止めとけと言ってるんだと思う。
まぁいいんだけど。
「弓さんは笑うとまさに花が綻ぶような、ってかんじなんだ」
「ほほう」
「昨日荷物を運ぶのを手伝ったら、ありがとう左近君?って笑ってさ、それがもう」
「うんうん」
「可愛いんだよ!昨日ので名前も覚えてもらえたと思うし、これは」
「うん」
「頑張るしかない!そうだろ信二朗!」
「だねぇ」
うーん、左近ってこんな子だっけ?
それに頑張るしかないって何を?付き合ってるんじゃなかったっけ?
口吸いとかはまだだけど、抱きしめるくらいはしたのに。
その時は顔真っ赤にしてくれて、あぁ可愛いなー俺愛されてる!ってそう思ったんだけど。
「今日は弓さんなにしてるんだろ、事務員になったって聞いたから」
「そうなんだ」
「あの綺麗な手に傷でもついたらと思うと」
「だねぇ」
「僕、様子みてくる!じゃ!」
この様子じゃ弓さんに惚れまくってるな。
俺の時とは全然違う。一目瞭然ってやつだ。
俺は別方向に歩き出そうとした左近の腕を掴む。
「な、なんだよ信二朗。お前も行きたいのか?」
「違う」
なんか、そんなお前はつまらないし、気持ち悪い。
「別れよ」
「・・・?おう?」
なぜはてなが付く。忘れたのかお前は、付き合ってたことを。
これで何か困るとか、怒るとか、泣くとかしてくれたらまだ何かあったのかもしれないとか考えてみるけど。
「まぁいいや、じゃね」
最後に見るのはぽかんとした顔か、それもいい。
お前に嫉妬の言葉なんて吐きたくもないし、忘れたの?なんて詰め寄りたくも無い。
左近が俺から離れても、まぁいいや。
付き合ってたの忘れられても、日常に戻るだけだな。
いらないし、あげるよ。天から降って来た女性の弓さんとやらに。