年越しそば





目の前でズズっと蕎麦を吸う奴がいる。
出汁の良い匂いをさせて、
上に乗ったてんぷらもさっくさくいいそうで、
おいしそうな蕎麦を…

俺は家で食べてきた。
食べ終わった時に、初詣に行きたいとメールが来た。

大晦日だからか、いつもより遅くまで開いている蕎麦屋の前を通れば、何とも良い匂い。
嫌な視線を感じて、隣を見下ろせば、
まだ食べていないから食べたいと言い出した。
こういうわがままはいつもの事。

それで、その蕎麦屋に入ったんだけど、
目の前で、これだけいい匂いをさせていれば、
食べたくなるってもんだよな。

「なぁ、一口ちょうだい」

といつもの仕返しとばかりに言えば、てんぷらのかきあげを銜えたまま、
動きが止まった。

そのまま目だけで目の前に座る俺を前傾姿勢のまま下から見上げる。
姿勢を戻し、かきあげから口を離して、

「え?あ、別にいいけど…」

尻すぼみになった言葉と徐々に赤くなる頬…

「あ!じゃあ、お箸!」

「いいよ」

そう言って、かきあげを持ったままの手を取り、
いつもこいつがやるように齧ってやったら、

「それは、反則だよ…」

と言って、俯いてしまった。





ちょっと待て!何が反則なんだよ!



そんな俺を他所に、さっさと食べ終わったそいつは、

「早く行こ!」

とさっさと会計を済ませて店の戸に手を掛ける。

古い作りに反して、勢い良く開いた戸と暖簾をくぐる俺達の背中に、店主の声が掛けられる。


「良いお年を!」







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