ポッキー





ビールも飲んで、ほろ酔い気分。
寒くなってきたからと鍋にしたのは良かったけれど、
いつも以上に食い過ぎてしまった俺は、
ソファに凭れて、眠りの世界へと旅立とうとしていた。

うとうとと、意識が遠のき、あと一歩……そう思った一瞬の間。
鼻先に感じる甘い香り……

そう…これは、いちごの匂いだ…





は?いちご?

ぱちりと目を開けた瞬間、鼻の中が冷たくて、想像以上のいちごの香り。

ぎゃー!何で鼻の中にいちごのポッキーが刺さってんだ!!!!


「あ…起きちゃった……」

「何してんだよっ!」

せっかくの夢見心地を邪魔されたことと、鼻にポッキーを突っ込まれたことで、
一気に頭に血が上り、刺さっていたポッキーを抜き、放り投げた。

「え?鼻にポッキー突っ込んでたんだけど……」

「何で突っ込む必要があるんだ?」

「だって、お前寝ちゃったら暇じゃん?
寝顔見てたら、鼻の穴に何本ポッキーが入るか試してみたくなっただけじゃん」

「は?」

みなさーん!寝てる人の顔を見て、鼻の穴に何本ポッキーが入るか試してみたくなったこととかありますか!?

「普通は思わねぇし、もし思ったとしても試さねぇだろうがっ!」

「俺だって、お前じゃなければ思ってもしないよぉ」

何?俺はお前に何をされてもいいってことか?

面白くなくなった気持ちを隠すように、そいつに背中を向ける。
部屋の中にテレビから聞こえてくる芸人達の笑い声だけが空しく響いていた。
当然眠れるはずもなく、なんとなく気まずい雰囲気が漂いだした頃、
向けていた背中にコツンと当たる感触がして……

「……ごめん、やりすぎた。機嫌直して……」

思った以上に近くから聞こえる声に、今の状況を把握しようと肩越しにチラッと後ろを振り返る。
俺の体に沿うようにして体を横たえ、背中に頭を添えるそいつに、
これはチャンスだ!と急に心臓がバクバクと血液を送り出し始める。

「…もう、するなよ」

「うん」

心臓がバクバクしてることなんて悟られたくなくて、
出来た男を演じてみるも、声が震えていまいち決まらない。

しっかりしろ、俺!こんなチャンス二度とないかもしれないんだぞっ!!!

くるっと向きを変え、腕の中にやつを捕らえる。
小さくて細いとは思っていたけど、実際に腕の中に入れてみると思った以上に細かった。

「……タロ…」

名前を呼ばれ、そっと体を離してやつの顔を見れば、いつになく切なそうに見上げる目。

吸い寄せられるように顔を近づけ、目を閉じた瞬間…………




鼻先に感じる、チョコレートの甘い香り………

「冷たっ!」

「極細だったら結構入ると思うんだよ!だからちょっとだけ!ちょっとだけじっとしててっ!!!いちごではもうしないからっ!」



そういう意味じゃねぇよっ!!!!!!






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