素麺 変な告白劇の後、付き合いだして早一ヶ月以上。 進展らしい進展は何一つない。 酔った勢いだったとは言え、本人の意思には関係なく奪った唇を、思い出しては見つめる…… ちゅるるんっ!ちゅるるんっ!と勢いよく吸い込まれていく素麺にすら嫉妬しそうっ!!! 「ピンクは俺のっ!」 「わかってるって」 世間よりも遅れてとった盆休みに、実家に帰ったら素麺を持たされた。 帰ってきて早々に家にやってきた鼻の利くこいつは、断りも入れず包装紙をバリバリと剥がし、箱のふたを開け、見つめること数十秒…… 「食べたい……ううんっ!食べてって言ってるっ!素麺が!」 いやいや、素麺はしゃべったりしないから。 寧ろ食わないでって言うから。 と思いつつも実家に帰る前に冷蔵庫の中身を整理したから、すっからかん。 まぁ簡単だしと思って、めんつゆを買いに行かせている間に茹でてテーブルに置くと、 緑とピンクの一本ずつ入ってる素麺に過剰反応…… 「ピンクっ!ピンクっ!」 「なぁ?」 「ん?」 「何でそんなにピンクにこだわってんだよ?」 「ねぇちゃんいるだろ?あんたは男だから緑ね!っていっつもピンク食べたかったのに食べられてたから」 「ふーん、でも普通緑じゃねぇの?男だったら」 「ピンクが好きなのっ!」 最後の最後に取っていたのか、ピンクの一本だけをめんつゆの入った器に入れ、 その一本だけを迎え入れる唇は……ちゅるるんっ!!! うわぁぁぁぁぁあっ!拷問だよ、これ!!!! 「ああ、ピンク美味しかった!ご馳走様!」 「あ……うん、ご馳走様」 なんか……振り出しに戻ってねぇ??? [*前] | [次#] ≪戻る≫ |