ハンバーグ弁当





次の日にそいつは何食わぬ顔でやってきた。

そして、その次の日も。また次の日も。

なんで?

そして…1週間通い詰められ、今日もやってきた。

さらに言えば、パチンパチンと新聞紙を広げた真ん中で足の爪を切っている。

それは…俺んちでしなくても良いんじゃないだろうか?

思ったけれど下手に口を出すことが出来ない。
だって…

だって、あの時の事をまた聞かれたらどうする?どうすんの俺!?

気になってるとか好きだとか言ってどうすんの、俺!?

小学校の頃、男同士で仲の良かった同級生に

「やーい、ホモ〜」

などとからかってた奴が、男を好きだとか思ってんだぞ。
これどうするよ!?

にしても…こいつも暇だな。
俺んちに1週間通い詰めるとか…




待て…

ひょっとして…

ひょっとして…

ひょっとして…

俺に気があるとか!?そうなのか???


それだったら願ったり叶ったりなんだけど…そんな事あるわけない…

パチンパチンという爪きりの音だけが部屋の中に響く。
そこに不意に、


「…好き」

言われた言葉にどきんとする。

「な、ななな何が?」


「うん!好き!」

ええええええ!そうなのか!そうだったのか!!!



「ハンバーグ!好き!」





「は?」

「ほら!ここ!この記事!ハンバーグ弁当500円だって!」

奴の細い指が指したのは新聞の広告欄だった……
一気に気持ちが下がっていく。



「じゃあ、今日はハンバーグ弁当だな…」

「うん!どっちが買って来るかじゃんけんしようぜ!」

「いや…俺が買ってくる。頭冷やしたいし…」

きょとんとした顔をしたこいつ無視して、鞄の中から財布だけを取り出し、玄関へと向かった。
靴を履き取っ手に手を掛ける。
開けたドアから入ってくる春の夜風は冷たい。



思った以上に冷たかった






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