マシュマロ




「つぎ〜の袋はなんだろなぁ♪お!マシュマロ!!!」

袋をバリっと開けて、真っ白なマシュマロを袋から1つ取り出した。
親指と人差し指で挟んで、プニプニとした感触を調べるように摘んでいる。

こいつにはバレンタインデーとかホワイトデーとか関係ないんだろうか…?
会社の女の子がくれたんだ!と嬉しそうに家にやって来て、お前も食べるだろ?と遠慮なんて言葉もなくズカズカと突き進み、定位置だと奴が言うソファの前に座り込んだ。

そう大きくはない紙袋に入った色とりどりの袋や箱。「White Day」と書かれた包装紙を見ながら、
あのどんぶりに入ったチョコはバレンタインデーに貰ったと解釈したほうが良いのだろうか?と思っていた。

いや、そんな大した意味なんてないだろ…と首を横に振っていると、
先ほどと同じような節をつけた調子で、

「つぎ〜の箱はなんだろうな♪おぉ!クッキー!!!」

先ほどのマシュマロ以上に喜びの声を上げる。

目線を合わせないまま、

「なぁ、それってホワイトデーって意味で貰ったのか?」

「当ったり前だし!」

口の端からぽろぽろとこぼしながら言う。

口の端…

見なきゃ良かった…

一気に顔に血液が集中しだした。やばい!

「…何か飲むか?」

「うん。牛乳」

牛乳…?

「クッキーには牛乳が合うだろ?」

「は?普通、コーヒーとか紅茶じゃねぇの?知らねぇけど… だいたい家に牛乳があると思ってんのか?」

「え…?ないの?」

「ある訳ねぇだろ…」

「うそ〜ん…」

しなだれたこいつを見れば、これからコンビニに行って買って来ても良いとさえ思えてくる…重症だな…

「じゃあ、水で良いよ!」

じゃあの意味がわかんねぇ!

だいたいこいつの思考をまともに理解しようと思うのが間違ってんだ。
まぁいいか。しらふじゃ俺がつらいだけだし、とキッチンに行き、
冷蔵庫を開けて水の入ったペットボトルとビールを1本取り出し、部屋へと向かう。

水をテーブルの上に置いてやれば、クッキーを食べ終えたのか、また紙袋の中を漁りだす。

少し距離を置いて座り、つけているだけのテレビに目線をやった。


後悔してた――
キスなんてしてしまったことを…


気づいてないんだろ。だからこうやって平気な顔をして俺のうちにやって来て、なんの危機感もなく、俺の隣で菓子を貪り食ってんだろ…

気づいてて欲しくはないけれど…気づいてて欲しいとも…思う。勝手だな…

と思ったところで、

「おい!」

横から声がする。ふいっと顔を横に向ければ、
プニっとした感触が唇に当たった。

「キッスの感触みたいでしょ?」

マシュマロを俺の唇に当てたまま、満面の笑みを向けるそいつ……



なぁ神様!こいつは気づいててやってんのか!?それとも、気づかずに天然でやってんのか!?

どっちなんだぁぁぁぁぁぁ!!!







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