どんぶりチョコ 「これ、何?」 「見てわかんないなら、聞いてもわかんない!」 「いや、どんぶりだってことはわかってるよ。だけど、この中身は…」 「チョコに決まってんじゃん」 しれっと言い放ったけど!何事も無いように言ってるけど! 先日、俺の家のどんぶりを奴曰く「ビスケット」になってしまったらしいので、悪いと思ったのか買って来てくれたらしい。 多分、いや、絶対に100均のやつだ。 ただ… どんぶり二つの中には、なみなみと入ったチョコレート。 ものすごく重くて、持っているのも苦痛になるくらい。 嫌いではないけれど…これだけ大量なのは、ちょっと…。 「何も、1人で食えって言ってるわけじゃないだろ?」 「いや、だけど…」 「つべこべ言うな!よ〜し!食べるぞぉ〜!」 そうは言っても… これどうやって食うんだよ! こんなになみなみにカッチコッチに固められたら、スプーンもフォークも刺さりゃしないだろ!? 「……これ、どうやって食べればいい?」 「お前が持って来たんだろ?」 「そうだ!ちょっとレンジ貸して!」 「待て!お前がするな。俺がする」 そう言って、奴の手からどんぶりをもぎ取る。こいつのことだから、きっと時間とか考えなしにレンジに入れて、スタートボタンだけ押して、あわやの大惨事になりかねない。 タイマーを30秒に合わせて、スタートボタンを押す。 ぐるぐるとレンジが回ってる間、そいつは、レンジの前でじっと待機。 子供か! チン! と音がして、奴が扉を開ける。そして… 「いい匂い!っと…うわ!あっつーーーい!!!」 「当たり前だろ!火傷したのか?!」 と問えば、火傷したらしい指を銜えてこちらを見る。 ……かわいいじゃん…。 いやいや、待て待て、俺!しっかりしろ!!! どんぶりの縁はかなりの高温。 なかはどろどろの代物だったけど、なんだかんだ言って、こいつの手作り… 「ちょっと待て!これ誰が作ったんだ?まさか…」 「ねーちゃんにやってもらった」 ホッと一安心。ラーメンですらのびのびにするこいつだから、溶かして固め直すだけだとは言っても、何が入ってるか気が気じゃなかった。けど、ねーちゃんが作ったってんなら大丈夫だろ。 味は普通のチョコだった。 だけど、ねーちゃんに全部食った写メを送ると言い出したせいで、一生分のチョコを食べさせられたような気がする… 当分、チョコは食べるのはもちろん、見るのも、嗅ぐのも、聞くのも嫌だ! とカレンダーを見れば、2月11日。 週末はバレンタインデーじゃねぇか!!!ちくしょー!!! [*前] | [次#] ≪戻る≫ |