ピンポーンと軽快な音が部屋に響く。

うららはお昼寝中。

「はい」

とインターホンで応対すれば、

「ユキちゃん?高橋だけど…」

「あ!由美子さん!今、開けますね!」

オートロックのボタンを押して、開錠すれば、TVインターホンの画面にエレベータへと向かう由美子さんの後姿が映る。
程なくして、部屋のインターホンがピンポーンピンポーンと二回なる。
一回は下のエントランスで、二回は部屋のドアの前。
最初にうららが教えてくれた。

最初から二回鳴るのは絶対に出ないでって。

「はーい。今、開けます!」

ガチャっと見た目に合う重さをしたドアを開ければ、

「こんにちは。お邪魔します。あと、これ」

「ありがとうございます!どうぞ、どうぞ〜。って私の家ではないんですけど…」

由美子さんが持っていた、白い箱を受け取りながら言えば、

「また、そんなこと言って。内山が聞いたら、怒るわよ」

「だって、居候ですから。あ、ソファでもこたつでも、どちらでもって、こたつはうららが寝てますけど」

「ありがとう。じゃあ、こたつに」

いじめっ子の顔をした由美子さんは、うららの寝てるところに近づいて、

「内山!起きなさい!」

と言った。

「う〜誰よ。内山って?」

「あなたよ!」

「その名前で呼ばないで…って由美子何しに来たの…?」

「何しにって…。遊びに来たのよ」

「約束してたっけ?」

「してないけど…ユキちゃんにおいしいケーキ持って来たの」

「あ、そう。あたしのもあるんでしょうね?」

「さあ」

そう言って、うららと反対側に腰を下ろして、こたつの上で開いたままになっていた冊子に目を落とした。

「誰が仕事探してるの?まさか、内山?」

「違うわよ〜ユキよ」

「なに?ユキちゃん仕事するの?」

「あ、はい!いつまでもうららのところにはいられないので…」

コーヒーの準備をしながら答えれば、

「何も、出てかなくたって…」

と、うららが渋る声がする。
本当はずっと考えていた。うららのところでいつまでも居て良いはずがないって…
だから、今更だけど実行に移そうと思って。
 
「なに?内山、男でも連れ込んだの〜?それで嫌になったとか?」

「そんなことしないわよ!!失礼ね!」

「そんなんじゃないですよ。このままではいられないし、田舎には帰り辛いし…」

「そっか。でも、この不景気じゃねぇ…」

「ええ。良いところはないんですけど…」

「うちは、新卒しか取らないし…取引先とかであれば、聞いておくわね」

「ありがとうございます。助かります」

コーヒーを入れて、由美子さんの持ってきてくれたケーキを持ってこたつへと行く。

本当にありがたい。
ここは、優しく、優しく包んでくれる人ばかりで、その優しさについつい甘えて、一年が経ってしまった。

休日のお昼下がり。女3人?の楽しい楽しいティータイム。
私の大好きな苺がふんだんにのったケーキは、今の私の状況のように、蕩けるような甘さと少し甘酸っぱかった。




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