2 ピンポーンと軽快な音が部屋に響く。 うららはお昼寝中。 「はい」 とインターホンで応対すれば、 「ユキちゃん?高橋だけど…」 「あ!由美子さん!今、開けますね!」 オートロックのボタンを押して、開錠すれば、TVインターホンの画面にエレベータへと向かう由美子さんの後姿が映る。 程なくして、部屋のインターホンがピンポーンピンポーンと二回なる。 一回は下のエントランスで、二回は部屋のドアの前。 最初にうららが教えてくれた。 最初から二回鳴るのは絶対に出ないでって。 「はーい。今、開けます!」 ガチャっと見た目に合う重さをしたドアを開ければ、 「こんにちは。お邪魔します。あと、これ」 「ありがとうございます!どうぞ、どうぞ〜。って私の家ではないんですけど…」 由美子さんが持っていた、白い箱を受け取りながら言えば、 「また、そんなこと言って。内山が聞いたら、怒るわよ」 「だって、居候ですから。あ、ソファでもこたつでも、どちらでもって、こたつはうららが寝てますけど」 「ありがとう。じゃあ、こたつに」 いじめっ子の顔をした由美子さんは、うららの寝てるところに近づいて、 「内山!起きなさい!」 と言った。 「う〜誰よ。内山って?」 「あなたよ!」 「その名前で呼ばないで…って由美子何しに来たの…?」 「何しにって…。遊びに来たのよ」 「約束してたっけ?」 「してないけど…ユキちゃんにおいしいケーキ持って来たの」 「あ、そう。あたしのもあるんでしょうね?」 「さあ」 そう言って、うららと反対側に腰を下ろして、こたつの上で開いたままになっていた冊子に目を落とした。 「誰が仕事探してるの?まさか、内山?」 「違うわよ〜ユキよ」 「なに?ユキちゃん仕事するの?」 「あ、はい!いつまでもうららのところにはいられないので…」 コーヒーの準備をしながら答えれば、 「何も、出てかなくたって…」 と、うららが渋る声がする。 本当はずっと考えていた。うららのところでいつまでも居て良いはずがないって… だから、今更だけど実行に移そうと思って。 「なに?内山、男でも連れ込んだの〜?それで嫌になったとか?」 「そんなことしないわよ!!失礼ね!」 「そんなんじゃないですよ。このままではいられないし、田舎には帰り辛いし…」 「そっか。でも、この不景気じゃねぇ…」 「ええ。良いところはないんですけど…」 「うちは、新卒しか取らないし…取引先とかであれば、聞いておくわね」 「ありがとうございます。助かります」 コーヒーを入れて、由美子さんの持ってきてくれたケーキを持ってこたつへと行く。 本当にありがたい。 ここは、優しく、優しく包んでくれる人ばかりで、その優しさについつい甘えて、一年が経ってしまった。 休日のお昼下がり。女3人?の楽しい楽しいティータイム。 私の大好きな苺がふんだんにのったケーキは、今の私の状況のように、蕩けるような甘さと少し甘酸っぱかった。 [*前] | [次#] ≪戻る≫ |