金曜日の夜 2 シャワーを浴び、ビールを飲み、夕飯を食べ終えると、部屋の中に何とも言えない甘い空気が漂いだした。 後片付けを終えると部屋の中の照明が落とされ、間接照明が灯された。 部屋の中に座ってテレビを見ていた自分の首筋に甘えるようにして佐々木さんがしなだれかかってきたから、 リモコンをつかんでテレビを消した。 その頭に指を差しこみ、慈しむように撫でる。 それを数回繰り返していると、熱い吐息が喉元をかすめられ、額にキスを一つ落とす。 そのキスが合図になり、顔を上げた佐々木さんの唇が自分のそれに噛み付くように重なった。 食われてしまうのではないかというくらいの激しいキスに、唾液が顎を伝う。 唇を合わせる音だけが部屋の中に響く。 漸く離された唇は、暗い部屋の中でいつも以上に妖艶で、赤味を帯びているように見えた。 口元を拭う仕草ですら色っぽく見えて、腰のあたりにズクンと熱が集まる。 また唇を合わせ、互いに服を脱がせあいながら、そのままベッドにもつれ込んだ。 クーラーの効いた部屋の中で、佐々木さんの白い肌が重なる感触が気持ちいい。 裸のまま抱き合うと、しっかりと反応した互いのそれがリアルに伝わる。 自分が下になり、佐々木さんが上にいるという状況はいつもと違うような気がしたけれど、 胸の突起に指を這わされれば、快感でそんな思いすら霧散する。 頭を下げピチャピチャと音を立てて舐められ、噛まれ、吸われる。 そのまま下に向かい、先走りを滲ませたそこを温かい口中に導かれ、大きく体が仰け反った。 「…くっ……はぁっ…あっ…」 部屋の中に自分の息遣いと吐息のように吐き出される声が響く。 「一度出して…」 銜えたまま話され、その声がビリビリと自身に伝わり、更に血液が集中した。 佐々木さんの頭に押し付けるようにして手を置くと、柔らかい下も一緒に揉まれるようにされて、堪え性のない自身が一気に白濁を吐き出した。 はあはあと息をしていると、ベッドで膝立ちになった佐々木さんの反り返った下半身が見えた。 先走りを滴らせ、小さめではあるけれど色素の薄いそこが異様においしそうに見える。 手を伸ばして触れようとすると、そのてをそっと払いのけられる。 どうして?と思っていると、 「これが欲しいですか?」 と聞かれる。 「欲しい」 そう言うとふふっと笑って、膝で前に進み出る。 手を伸ばして触れると、 「あっ」 色っぽい声が聞こえ、迷わずそっと握り、根元から舌を這わせた。 感じやすい先の方に舌を這わせると苦い先走り感じ、今度は喉の奥まで銜え込んで味わうようにして上下する。 佐々木さんの腰がじわりと痺れたように動く。 頭を掻くように撫でられ、 「犬みたいで…可愛い」 ぐしゃりとかき回す感触に、感じてくれていると思うと嬉しくなった。 変化を口の中で楽しんでいて、そろそろかなと思ったところで、腰が引かれる。 口を開けたままにしていると、構わず佐々木さんの唇が触れて、離れた。 「今日は…私に抱かせてください」 唇の上で囁かれるような言葉が滑って落ちて行く。 言われた言葉の意味を理解するのに、時間がかかった。 その間に体をずらした佐々木さんが、力が蘇ってきていた自身をくわえ込む。 浅ましい体は、覚えのある快感に思考を持っていこうとする。 足と足との間に割り込むように体を入れた佐々木さんの腕が、大きく割り開くようにして自分の足を広げたと思ったら、 いつもは触れられないところに、自分が教え込まれたように解すように触れてきた。 その感触にぞくぞくと駆け上がるものがあって、嫌になるほど反応する。 行ったことはないけれど、風俗で前立腺プレイなるものがあるのだから、気持ち良いはずだとは思う。 佐々木さんも自分がするその行為に十分感じているのだから、実際気持ちが良いのだろう。 そう思うのに、指がつぷりと差し込まれる感覚に酷く違和感を感じ、体を捻って抵抗した。 「い、いやっ」 発した声はひっくり返って情けなさを強調している。 「どうして?池田さんはいつも私に同じ事をしているじゃないですか?」 言われている言葉はもっともで、反論のしようがないけれど、それでも入ってくる感覚に違和感が募る。 指でこれなのだから、佐々木さんのが入ってきたら… そう思うと立ち上がっていたそれも縮こまるような気がした。 「池田さん…私の事が好きでしょう?」 わかっている事実を言葉に出されて言われる。 好きだ。 大好きだ。 自分の行動からわかるそれを佐々木さんが裏手に取っていてずるいという感情がわいてくる。 それでも嫌だと思う体は、目元に涙をじわりと浮かべる。 その時、掠められた感触にびくりと背が仰け反った。 「ひっ!」 「ここですね」 探していた場所が見つかって嬉しそうにする佐々木さんを涙で滲む目で見ていると、やめてくれそうにない雰囲気を感じる。 触れるたびにぐずぐずとした快感が駆け上がる。 中を弄られるピリピリとした感触と圧迫される感じは拭い去れないけれど、意思とは反して蜜を滴るそれが物語っていた。 苦し紛れに、ずっと思っていたことを聞いてみる。 「さ、佐々木、さんっ」 「何ですか?」 「俺のことっ、好きですか?」 最後の抵抗だと言わんばかりに聞いてみる。 言ってくれたら、受け入れられるような気がしたから。 「勿論」 笑みすら浮かべて言われた言葉があまりにも早く、軽い感じがした。 「ほっ、本当に?」 念を押す言葉は、下を動かされながら発するからか飛び飛びになった。 「ええ、じゃないとこんなこと出来ないでしょ?」 「あうっ!」 返事をするやいなや銜えられ、これ以上聞くなと言われているような気がしないでもなかったけれど、 気持ち良さから頭の中が真っ白になっていく。 きちんと好きだとは言われなかったけれど、聞いた言葉に安心しようと言い聞かせてた。 破裂するように弾けたそれが、佐々木さんの喉の奥を通っていくのを涙で滲んだ目で見届ける。 あまりにも気持ちが良かったから、真っ白になったままの頭で、次に何をされるのかまったく考えていなかった。 脱力した体をうつ伏せにされ腰が浮かされて、掴まれた感覚を察したときには既に遅く、 冷やりとした感触の後、猛って熱いものがじわりと押し広げるように入って来た。 「いやっ、いやっ」 力の入らない腕と足が恨めしい。 「あっ、きついっ」 顔を捻って佐々木さんを見れば、眉間に皺が寄っていた。 「痛い」 恨めしさを滲ませた声を発しても、 「もう少し。緩めてください」 と言われる。 そういわれても、嫌なものを受け入れるのに、緩められるわけがない。 痛さに体に力が入り、更に佐々木さんを締め付けてしまい、逆にその感触を強調した。 「くっ、力を抜いてください」 「ひっ!」 あまりに自分が締め付けていたのが辛かったのか、いきなり前を掴まれて力が抜ける。 「あっ、あっ…」 前に進むにつれて押し広げられる感覚に情けない声が漏れる。 ふーという溜息が聞こえたと思うと、 「全部、入りました」 と言われる。 言われなくても、臀部に伝わる佐々木さんの腰の感覚で全てが入ったことはわかった。 「ゆっくり、動きますからね」 そう言うと、宣言どおりにゆっくりと抜き差しされる。 引き攣るような感覚に、ゆっくりと動く分、佐々木さん自体が妙にリアルに伝わった。 感じていた部分がこすれるたびに、意思とは反して気持ちよさが駆け抜ける。 痛いと言っていたのが嘘のように、何度となく注がれ、何度となく吐き出し、夢中になって腰を振っていた。 声が枯れ、快感の涙が枯れる頃、やっと解放された。 汚れたベッドに二人してぐったりと寝転ぶ。いつもは腕の中に入っている人物が、背中から抱きついてくることに既に違和感は感じなかった。 「やっぱり、素質がありましたね」 囁くように言われ、汗で湿った頭を撫でられる。 愛されているような気がして、寝返りを打って佐々木さんと向き合うと、既に冷えた唇が触れて離れた。 「…佐々木さんに、聞きたいことがあります」 発した声はかすれていた。 「何ですか?」 「…歳は?」 そう言えば言ってなかったですねとクスクスと肩を震わせながら言われ、 お見合いやコンパの席で出されるような質問がお互いの瞼が重さに勝てなくなるまで行われた。 [*前] | [次#] ≪戻る≫ |