2000Hitお礼小説





久しぶりに会ったのだから、仕方ない。
会うたびに体を重ねるのは、本意ではないけれど、求められなければ求められないでそれは不本意というか、物足りないというか…
俺も忙しければ、高元も忙しい。
分かっているのはいるのだけれど、心は四六時中だって一緒にいたいと思っているのだから、
繋がれる間は、心だけではなく、体だって…


だけど、時と場所は考えて欲しい…


池田の忘れた書類を沢田物産まで持って来たときだった。
企画違いという事で、今回は高元ではない人が担当したようだ。
だけど、大きな会社で人数も多い沢田物産で、まさか高元と会う事が出来るとは思ってもいなかった。
とは言っても期待していなかったかと問われれば、否定は出来ない。

人気の少ない通用口付近のトイレに連れ込まれ、個室に押入れられれば、抗議の声を上げたくもなる。
だが、その声を上げさせまいとするように合わされた唇が、早急に自分を求めているのだと知れば、
答えないという選択はなくなっていく。
合わされた唇の隙間から高元の舌が入ってくる。
その舌に自分の舌を絡ませれば、空いた隙間から吐息と水音が漏れる。
やたらと響くトイレの中。誰か来やしないかという焦燥感。
高元の大きな手が俺の後頭部へと回り更に深くなる口付けに酔いしれていると、背中がトイレのドアに当たる。
そこで一旦、唇が離され、

「この後の予定は?」

と低い響きが耳元で聞こえた。

「……特には」

と答えた俺の返答に満足そうに笑った気配を感じたと思ったら、また唇をふさがれる。
背中でガタガタと揺れるトイレのドアが気になると言えば気になるが…

後頭部から離れた高元の手がスーツの脇に滑り込んだのに気づき、俺も同じように高元のスーツの隙間から手を差し込む。
同じように撫でさすり、シャツの上からでも徐々に主張を始める頂を見つければ、俺より先に見つけた高元が、かりっと爪と立てる。
俺だって男だ。いつまでもされるがままにはなっていられないと思っての抵抗も虚しく、与えられた快感に仰け反りそうになるが、後ろはドア。
快感を逃す術も持たない。
合わさった唇の隙間に高元の勝ち誇ったようなフッという吐息が漏れる。
負けるもんか!と、ベルトのバックルに手を掛ければ、抵抗する事無く、緩める事が出来る。前をくつろげ、手を差し入れれば、主張した高元の熱を布越しに感じ、それが更に俺を昂ぶらせる。
上下に手を動かし、形をなぞれば、それが角度と硬度を増すのがわかる。

すると、高元も同じように、俺のベルトに手を掛け、同じように手を差し入れた。
既に昂ぶっているそれをさすられれば、先走りがあふれてくるのが自分でも分かる。
そうなれば、高元を攻めていた手が止まる。
ゆっくりと形をなぞる感覚が、布越しでもどかしい。

「た、かもと、…もう…」

というお願いを聞いてくれたのか、下着の中に高元の手が入る。
冷たい手に触られ、一瞬萎えかけたが、それでも触られれば、布越しのそれとは比べ物にはならない。
このまま高みへと導いてくれるだろうと思っていたその手が離され、
今度は、体を反転させられ、ダンっと言う音と共に目の前にはトイレのドア。

「ま、待って…高元!」

と、小声なりにも抗議の声を上げれば、

「…我慢できない…」

と、切羽詰まった声が後ろから聞こえる。
いきなり、後孔に入ってきた指に、びっくりしたのはほんの束の間で、
良いところを攻める高元の指に翻弄され始めれば、色んなものが頭の中から消えていく。

何でそんなものを持っているのか不思議に思ったが…
高元が俺のそれと、高元のそれにゴムをかぶせる。
助かった〜。スーツ汚れるんじゃないかと…

「これでも、噛んでろ……」

それは、俺のネクタイ。
声が漏れることに比べれば、確かに安い代物だけど…

後ろから高元が覆いかぶさる。
メリメリっと音がしそうなほどに昂ぶっているのが分かった。
ゆっくりとではあるが、入ってくる質量の大きさに涙が浮かぶ。

「ふん、ふ、…ぅうう!」

「…きついな、久しぶりだからか…」

女のそことは機能が違う。
こういう関係になって初めていろいろと調べれば、週に一、二度、自分でも馴らしていないとすぐに硬くなる、らしい。
最初からそういう嗜好なら出来ることではあるのだろうが……自分でするのには抵抗がある。
だから、高元と会えないとなると、久しぶりの行為に負担を強いられるのは仕方が無い。
立っているのが苦しくなり、ネクタイをはずして、

「た、かもと、この体勢きつい……」

そう言えば、はぁとため息が聞こえ、

「立ちバックは男の夢だろ……」

と言うとんでもない言葉が聞こえたが、無理なものは無理なのだ。

諦めた高元が、便座に座る。

その上から、俺が跨いで、自分で入れるように導く。
高元の肩に手を掛け、ゆっくりと沈める。

痛い。だけど、繋がりたい――

また、ネクタイを口に突っ込まれ、息が上がりそうになりながらも、沈めて、漸くすべてを飲み込んだところで、目が合った。
余裕などない牡の目。
少し恐くなって、高元の肩に額を寄せる。
その形に馴染むまでじっとしていれば、

「もう、良いか?」

問われる声に返事の変わりに一つ頷けば、下から凄い勢いで突かれた。
グラグラと揺れる視界。声を抑えてはいるけれど、漏れる吐息。
ガタガタと音を立てる便座。
誰かが入ってくれば、すぐに何をしているか悟られるだろう。
でも、それさえも煽る要素の一つであり、更に快感を捉えようと、自分でも腰を振る。
不意に高元の手が俺を捉え、律動と同じように上下に手を動かされれば、開放が近い事を知らせる。

「う、ううん、ふっ……うう、うぅ」

くぐもった声の反応に高元が感じ取ったことは的確だった。

「……ック」

小さな声の高元の絶頂が近いことを聞き取り、更に奥を突かれたとき、膨張した互いのものは一気に解き放った。


はぁはぁと息をし、肩を揺らす高元にすべてを預けて、脱力する。

我に返ってみれば、誰か来ていたら冷や汗ものではあるけれど、久しぶりに繋がった体から申し分ない満足感を得ていた。

甲斐甲斐しくも、動けない俺の世話を焼いた高元に支えられ、洗面台まで行き着き、ネクタイを締めてもらって最後にタイピンをつける。
それが、高元がいつもつけているブランドものだという事は知っていた。

「なんで…?俺のは?」

「お前のは、こっち」

とポケットの中から、俺のタイピンを出す。

「それで、俺のはこっち」

と、指差された方を見れば、シックなデザインの中に輝く石…

「!! それって、俺が真由子に…」

「そう」

俺が真由子に送った…いや、投げつけた給料の3ヶ月分の石。
永遠の輝きと言われるその石がシルバーのタイピンに埋め込まれている。

「お前がつけるか?」

と言われたけれど、それは高元につけていて欲しいと思い、首を左右に振る。

「それと……渡しそびれていたから、な」

とかざされたのは、マンションの鍵。

不意に涙腺が緩んで、じわっと滲む。

「なんか、今日は記念日みたいだな……」

言った言葉と、涙に顔が赤くなる。
それを隠すように、高元に顔を寄せ、口付けをした。




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