スイッチ





キスはそれより先の行為に進むための――
スイッチだと思う…



勢いのままもつれるようにして入り込んだ明るいエレベータの中で、一息つきたい俺の腕を更に引き寄せ、
噛りつくようにして一瞬触れた高元の唇は冷たかったけど、それ以上に絡ませた舌の熱さと、息苦しさに意識を持って行かれた。

チンという6階に着いた音が聞こえ、唇を離せば、高元も同じくらいに息が上がっていた。

肩をつかまれ、また引きずられるように押し込められたドアが、すべてを排除して俺と高元だけの世界を作り出す。


玄関で靴を脱ぎながら、どちらからともなくまた唇を合わせ、そのままの体勢で、服を脱ぎながら寝室へと向かう。

2人して暗いままの寝室にあるベッドに倒れこんだ時に、俺の太ももに当たる高元の硬いそれを感じた体は、
ドクンと心臓が血液を送り出し、欲情していく。
お互いの服をお互いが剥ぎ取り、本能のままに求めていく。

俺の上で馬乗りになった高元が首筋にキスを落としながら、触れるか触れないかの感触で体をなぞる。
その感触に漏れそうになる吐息を飲み込み、はぁと息をつき、高元の首にまわそうとした腕を取られ、お互いの体の間にある二つのそれを握らされる。

熱い…

その俺の手ごと包むようにして、高元の大きな手が包み、ゆっくりと上下に動く。
濡れても居ないそこをこすられれば痛いはずなのに、
俺とは違う鼓動を直に感じて、興奮し、痛みが快感へと変わっていく。

「うっ…ふぁ」

抑えることが出来ずに、漏れた声が月明かりの部屋に響く。

徐々に犯されていく快感に、すべての理性のスイッチが切れていく―

高みに登らされて、漏れる先走りに徐々に濡れる手を無心に動かし、快感だけを捉えるために追い討ちをかけていく。

「え…いた…」
「あ!…イ、キ…そ…」
「…おれ、も…」

目をぎゅっと瞑り、快感を追いかける俺の耳に聞こえた高元の声が遠くに聞こえ、さらに真っ白になっていく頭の中…

縋るように唇を求めれば、
望んだように塞がれる。

「ん、んん!」

手と腹に白濁が飛び散ったことで同時に解き放ったことを知り、漏れる声が高元の口の中でくぐもった。





唇を離して、はあはあと息をする高元が俺から離れていく。
手を伸ばして追えば、

「明日、仕事だろ」

そう言った高元の声が、理性のスイッチを押していく。
次々と繋ぎ合わされる記憶と、現実。


「まずは、風呂か」

そう言って風呂へと向かう高元の大きな背中が月明かりに見え、部屋を出て行く。


動物的な匂いの充満する部屋。
カーテンの間から漏れる月明かり。
幻想的なそこに居て、1人だけ取り残されたことで、
今日一日を振り返り、自分の行動を辿った。


このままの俺じゃいけないと思う。


すべてにおいて、先を行く高元がいつか現実を見たときに、俺はきっと置いていかれる。

「幸せにする」その言葉に浮かれた自分は、
高元にそう言ってもらえるほどの価値があるようには思えなかった――




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